(画像はイメージです/出典:photoAC)
リフレーミング、
ご存じですか?
(私が実践で得た成果を基に書いています)
アプローチが上手くいっても、お客様に直ぐ突き放されてしまう場合があります。お客様が「これ、高いわ」など、否定的なことを口にして、コミュニケーションが途切れてしまうような時です。
その場合の解決方法を記します。
1.リフレーミング
リフレーミング・・・reframe(動詞)「~を組み立て直す」の名詞形が reframing です。
主に「その事柄に既に与えられている意味について、視点を変えた異なる見方をしてみましょう」という意味で使われています。視点を変えることによって、例えば否定的な事柄でも肯定感を与えられるようになるので、心理学療法などにも使われているようです。
これを解説している事例でよくみかけるのは、
たとえば・・・
A:「準備の時間が、あと半日しかありません」をリフレーミングして
B:「準備の時間が、あと半日あります」ととらえることにより、心に余裕ができます。
たとえば・・・
A:「あの子はすぐ泣く。泣き虫だ」をリフレーミングして
B:「あの子がすぐに涙を見せるのは、あの子は感受性が強いからだ」ととらえることにより、その子の尊厳を守り、本人に伝える時は本人に無用な心理的落ち込みをさせず、むしろ自信をもたらすことができます。
そこで・・・、
2.リフレーミングをセールスに活かして活路を開く
販売では、リフレーミングを活用してお客様の購買意欲を起こさせるテクニックがあります。
元々セールスの仕事に長けている人は、誰かに教えてもらうことなく、この方法を実践しています。
私のように、元々セールスが苦手であった場合は、この理屈を覚えて実践することにより、セールスの仕事に活路を開くことができます。
たとえば、商品をお勧めした時の、お客様からの反論・・・
「だって、これ、高いじゃない」
「だって、これ、もう少し色が濃かったらいいんだけど」
「だって、これ、ずいぶんと重いじゃあない」
こんなとき、お客様の気持ちを尊重しながらコミュニケーションをつないでいって、お客様に購買欲を起こさせるために、スタッフはどのような発信をしていけばいいのか・・・、その方法をご紹介したいと思います。
3.共感する
「だって、これ高いじゃない」と、否定されても、いったんは共感して下さい。そこがコミュニケーションをつなげる出発点です。
共感をすれば「ほら、あなたもそう思でしょう」と、お客様は安心します。安心するので、聴く耳が開きます。聴く耳が開くので、スタッフの言葉は素直にお客様の心の中に入っていきます。
スタッフの共感 ⇒ 安心 ⇒ 聴く耳が開く ⇒ セールストークを素直に聴いていただける ⇒ 情報がきちんと伝わる ⇒ お買い上げ下さる可能性が高まる
「だって、これ高いじゃあない」とお客様に云われて、もしも「そんなことないですよ」とお客様の発信を否定したら・・・
お客様は言ったことを否定されるので、お客様は聴く耳を閉じてしまいます。その後にスタッフが、値段のワケを一生懸命に説明しても、お客様の耳は閉じているので、なかなかお客様の心には入っていきません。
なので、「コレ、高いじゃあない」とお客様に云われたら、以下のように返答してみて下さい。
「そうですよね。実は、わたしも最初はそう思いました」
このテクニックは必ず過去形で共感することです。これを現在形で伝えたら、それでは商売になりません。
否定的なことを言われた時、そこへの共感は 必ず過去形で共感する。これは鉄則です。
*
このように、リフレーミングの考え方を活用して、お客様の否定的な発信を肯定に反転していきます。そのテクニックを(1)(2)(3)と三つの繋ぎ方でご紹介いたします。
〔Ex〕ここは調理用品の売場。あなたの担当は土鍋。あなたは、土鍋でご飯を炊飯する美味しさをお客様にお伝えして、その土鍋を売ろうとしています。
お客様は「まあ、重いのね」と、購入への否定的な理由をスタッフに伝えてきます。その理由をリフレーミングの考え方を活用して、買う理由へと変えていきましょう。以下は、その例文です。
(1)If ~
:お客様の発言とは反対の事を仮定して、その時のデメリットを伝えてみましょう。使う接続詞は「もしも~」です。
「そいうですよね。重いですよね。ただ、もしも軽い土鍋だったら、どうでしょうねー。たぶん軽いってことは薄っぺらな土鍋で、土も土鍋に適していない密度の低い土だから、なので、炊飯に大切な”はじめチョロチョロ”の時間が短くなってしまって、おいしいご飯は炊けないと思いますよ。この重さが、この土鍋の肉厚さを物語っているわけで、なので、じっくり熱くなるので、はじめチョロチョロをしっかりとやってくれるし、蓄熱性にも優れているから、ほんと、上手に炊けるんですよ。お客様、重いから、いいんです。重いから、おいしいのが炊けるんです」
お客様の何人かは、「あら、そうなの。重いのがいいのね」とおっしゃってくれます。・・・”重い ≒ 肉厚 ≒ 蓄熱性がいい ≒ 美味しく炊ける” という理解をしていただけるんですね。
もちろん全ての人に通じるわけではありません。ただ、冒頭から重い理由を必死になって伝えるよりは、いったん「もしも~」を挟むことによって、お客様の心をつかまえられる率は上がり、よって販売率も上がります。
(2)You want ~から「もしも~」につなげる
:お客様のニーズを想起させ、そのメリットを説き、その購買理由の優先順位が「土鍋の扱い易さ」よりも上位であることを明確にしていきます。
「そうですよね、重いですよね。ただ、お客様。お客様が望んでいらっしゃるのは、ご飯を美味しく炊くことですよね。今よりも美味しいご飯をいただくために、土鍋炊飯をされたいんですよね。もしも、重たいっていって、この土鍋を買うのをやめてしまったら・・・、お客様は、この先一生、土鍋で炊く美味しいご飯を炊くことはできないんですよ。それでも、いいんですか?」
半ば脅迫的な言い回しですが、「もしも~」「これを買わなかったら」「未来は暗い」という構図でトークを組み立てます。そのトークがより効果を出すためには、その前にニーズを想起させておくことが大事です。
(3)時間軸を活かす
:(2)でも登場しています。時間軸を強く意識させて下さい。つまり、未来に起こり得るメリットをイメージさせて、その優先順位をはっきと意識させます。
「そうですよね。重いですよね。ただ、ほんと―に、おいしいご飯を、1年365日、まいにーち、いただけるんですよ。ご家族の笑顔も見えてきません? ただ重たいからっていって、素敵な家族の笑顔や幸せを、遠ざけてしまったら、もったいないですよ。幸せは、今、お客様の目の前にあるんですよ」
*
あと、もうひとつだけ、テクニックを追加します。
例文で使った「ただ」についても勉強して、意識して使えるようにしましょう。
上記の例文には、すべて「ただ」という接続を使いました。
「そうですよね。重いですよね。ただ~」
人は否定されると、いやなものです。たとえ買い物であってもです。
なので、お客様に対して「でも」「しかし」などの否定語を使う時には慎重になりましょう。否定語を使うと、お客様の耳はキュッと閉じてしまいます。
お客様が購買を止める否定的な事柄を発信して、あなたがその考えを覆したいときには・・・
ひとまずは共感して、そこから「ただ~」とか、「ただですね~」という接続言葉を使って、お客様とのコミニュケーションを繋げてください。きっとうまくいくと思います。
「これ、高いわ!」
「ですよね。実は、わたしも、最初はそう思いました。ただ、お客様。一度使うとですね、ああ、買ってよかったって思います。そういうお客様、多いようですよ。実は私もそうでした」
「ほんと?」
「ほんとですとも?」
「どうして?」
「なぜなら~」
お客様様は耳が開くので、スタッフの言葉はお客様の耳に素直を入っていきます。なので、その商品の機能や特性などについて、きちんとお伝えすることができるのです。自然な形で「なぜなら~」につなげることができるのですね。商品の機能特性をきちんと伝えることができれば、販売するチャンスは、さらに増えると思います。
販売を楽しみましょう!