(画像はイメージです/出典:photoAC)
セールストークには
たった二つの
コツがあります
ひとつは
お客様に未来を見せること
ひとつは
お客様から信用を得ること
例えば、売ろうとする商品が炊飯器だとしましょう。
スタッフは誰しも、その炊飯器の機能特性、他の炊飯器よりも勝っている事柄について、一生懸命に述べ立てるのではないかと思います。
それはそれで間違いではありません。製品の正しい情報をお客様にお伝えすることは、販売する側の責務でもあります。
ただ、お客様が知りたいことは、もちろん製品の特性は知りたいのだけれど、もっと知りたいことは、「その炊飯器を購入したら・・・、うちのご飯は、食卓は、どうなって、私は、私の家族は、どう思うのか?」ということです。
製品の特性はわかりました。でも、だから、毎日の食事の支度、食卓、家族の気持ち、食欲、そして後片付け、さらにお弁当作り・・・、その炊飯器の特性がいったいどのように活きるのかしら・・・。
そして、私はこれを買ってよかったと思うのかしら、どうかしら・・・。わかりません・・・、不安です・・・。わからないことに、不安なことに、お金を使いたくはありません。100円200円のものじゃあないんです。だから買いません・・・。買わないのであれば、その理由は、そのようなところにあります。
ただ、多くの消費者の日常は、こうです。
知りえた ”製品の機能特性” から期待できるであろう ”メリット”や”ベネフィット” を無意識のうちにイメージし、そのイメージが良くて尚且つ経済的に許した時に、購買に至っています。そこに、本当の安心やメリット/ベネフィットの本当の確証はありません。・・・なので、たまに「失敗したわ、買うんじゃあなかったわ」という落胆や後悔が発生します。
お客様の方から買いにくるのではなく、営業スタッフが ”買うつもりのないお客様を買う気にさせる” ためには、お客様に納得と安心をご提供することが、ことさら必要です。
そのための策が、きちんと未来を描くことです。製品の機能特性の説明だけではありません。その機能特性によって、お客様が享受できるであろう”メリット” 及び ”ベネフィット” を見せることが必要です。
お客様に伝えるべき事柄は
機能特性はもちろん
機能特性によって得られる
”メリット” と
”ベネフィット” です
(画像はイメージです/出典:photoAC)
実は、機能特性の詳しいことは後回しにして、”メリット”や”ベネフィット”を先に伝えて、お客様の心に「ハッピーな未来」をはっきりイメージさせることができれば、それだけでも購買につながることは多々あります。
機能特性の詳しいことは後回しでいい場合があること、覚えておいてほしいです。
こういう事例があります。販売のシーンではなく、私のプライベートな体験です。
【私の経験:若い頃、初めての車購入時、ナビを追加した話です。】
その営業マンは、私の未来を見据えていました。そして、勧めるナビが私の未来にどのように関わるのか、それがどのくらい重大なことなのか、その営業マンは私に教えてくれました。だから、私は、ナビをオプションで付けました。
(画像はイメージです/出典:photoAC)
こういう話です。
私は頭金を貯めて、車のローンが組めるようになってから、いざ買う決心をして販売店に行きました。その日に至るまで、私は何度も足を運んでいます。販売店の営業マンとも沢山会話を交わしていました。
そしていざ購入となった時、その営業マンは言ったのです。
「加藤さん、ナビゲーションシステム、つけませんか?」
その話は、販売店に通い始めた頃、既に一度断った話でした。もう30年以上前のことですが、人生初めて車を購入した時のことなので、よく覚えています。まだカーナビは標準装備ではなく、オプションでした。私は予算外なので、購入するつもりは全く無く、即断りました。そうしたら、営業マンはこう言ったのです。
「そうですよね、加藤さん、予算外なのは存じあげています。ただ、加藤さん。想像してみて下さい。隣に彼女を乗せてドライブっていう時に、信号で止まる度に、こうやって地図をめくっていたら(営業マンは地図帳をめくる動作をしました)加藤さん、かっこ悪くないですか?」
「そ、それは、そうかもしれないですね・・・」
「ちょっと計算してみましょうか・・・(電卓をたたいて)36回払い、月々にするとこれくらいですよ」
「ああ、月々にしたら、そんなにはかからないんですね」
「でしょう。月々たったこの額で、彼女にスマートな加藤さんを見せられるんですよ。行きたい場所に、サッサッと行けるんです。加藤さんは自宅を出る時に行先をセットしておくだけでいいんです。あとは、横眼でチラチラってみるだけ。彼女と行きたい所、いろいろありますでしょう? 地図帳めくって、えーっと・・・じゃあ、カッコ悪いですよ。このナビを付けたら、ドライブがぐーんとスムーズに楽しめるんです。・・・それを考えたら、この金額、安いもんじゃあないですか 。操作はとっても簡単です」
私は購入を決めました。操作方法はその後から聞きました。
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営業マンは私に、カーナビを付けた未来をはっきりとイメージさせてくれました。そして同時に、カーナビを付けない未来も見せてくれました。
【解説】
お客様の未来は、
二通り用意されています。
ひとつは
製品を購入した時の未来
ひとつは
製品を購入しなかった時の未来
これらふたつの未来を、
「もしも~これを買ったら~」⇒ ハッピーな未来を手にいれる。
「もしも~これを買わなかったら~」⇒ アンハッピーな未来になってしまう。
と、各々用意をして、それらをお客様の心にイメ―ジできるようなセールストークを考えましょう。
「もしも~なら、未来は***です。だから、購入した方がいいですよね」
という方向に持っていくのです。お客様はご自身の未来をイメージしながら、ご自身の意志で購入を決めてくださいます。そこに ”買わされた感” は起こりません。
以上が、セールストークのコツのひとつ「お客様に未来を見せる」です。
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それでは、二つ目「お客様から信用を得ること」についてです。
これには、三つの要素があります。
ひとつは、熱意です
ひとつは、専門性です
ひとつは権威です
それぞれを解説いたします。
1.熱意
私には、今までいろいろな取引先様から営業をされて、店頭では沢山の消費者の方に接客販売をさせていただきながら、感じていることがあります。それは、熱意は全ての理屈を凌駕する力強さを持っているということです。
熱意は、
全ての理屈を凌駕する。
(画像はイメージです/出典:photoAC)
熱意とはつまり、一生懸命であるということです。
何に一生懸命かというと、売ることに一生懸命になるのではなく、「その製品をもってしてお客様の生活が便利になる、豊かになる、幸せを感じる」というベネフィットを伝えることに一生懸命だということです。
一生懸命であることに嫌味はありません。一生懸命であると疑う心が消えていきます。一生懸命は美しくて、人の心を動かします。
一生懸命は、
人を信用させる力に、
なるのです。
2.専門性
販売したい製品のこと、そしてその製品に関連する周囲のことについて、とても詳しい、いろいいろなことを知っていることは、お客様に信用をしていただく近道です。なので、営業スタッフは、製品のことだけでなく、その製品の周辺のことについても、調べて反芻し、自分のものとしておく必要があります。
また、お客様からの質問を想定して、返答を用意しておく予習はもちろん必要ですが、お客様の質問からお客様のニーズのコア(裏ニーズ)を想像し、ニーズのコアを解決し満たしていける返答につなげることで、お客様からの信用をさらにアップさせることができます。
機能特性の説明に終始するセールストークだけでは、お客様からの信用を得ることは難しいですね。
信用の程度は、
専門性の程度に比例する。
(画像はイメージです/出典:photoAC)
◆ただ、日々変化していく購買環境を考えると、専門性をどこで発揮すれば顧客の獲得と売上の向上に繫がっていくのか、 今現在、これから数年先の課題であるといえます◆
【専門性とネット購入】
昨今、若年者を中心に、益々ネット購入が勢いを増しています。先日(2018年8月)、インターンシップの学生さん(約40名)に講話をする機会があったのですが、「アマゾンを利用したことが”無い”人、手を上げて下さい」と尋ねたら、手を上げた学生さんは皆無でした。同じ質問を2~3年前にもしたことがありますが、その時はまだ若干名、手が上がったものです。
学生さんにしてみれば「アマゾンだから安心」という思いが無条件であるようです。製品の機能特性は他で入手して、購入の際の利便性を最優先した結果としての「アマゾン購入」なのですね。そこに専門性云々は関係ありません。製品の内容に関する質問応答無しに、注文したら直ぐに届くシステムは、自販機に近いものを感じます。
ただ、お客様の年齢が50才台になると、事情は異なります。熟年のお客様には、こういうお客様もいらっしゃいます。一度は去ったお客様が、再度戻ってきてくれるのです。そして、こう言って買っていってくれます。
「娘がネットでも買えるって言うんだけれど、やっぱ、あなたから買うわ」
この場合は、販売員の専門性を評価してくれた結果です。また、販売員として信用してくれた結果です。そんな時、私はさらなる信用を得るために、名刺をお渡しして、こう伝えます。
「お客様、ありがとうございます。お客様、万一、商品に何か不具合がありましたら、私に連絡をください。きちんと対応をさせていただきます」
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3.権威
「NHKの***で紹介されました」「***に掲載されているんです」「あの○○さんも使っています」「当店での今月の売り上げ1番なんです」「この林檎、○○賞をとった林檎なんだって!」
いろいろな言い方があります。ついつい、「へー、じゃあ、わたしも使ってみようかしら」と思ってしまう場合が多いですね。TVで紹介された商品は、多くの場合、その翌日店頭で品切れになってしまいます。
その製品が権威付けされたら、その製品の機能特性が優れている証拠として理解するのですね、人は。
ただ、人の価値基準、感性、生活環境、知識経験は様々なので、あの人が ”いい” と言っているモノが必ずしも自分にも “いい” とは限りません。なのに、そう思う人が出てきて、売り上げにつながっていくのは、心理的なものです。その状況を説明できるセオリーには、二つあります。
「類似性の法則」:人は他者と同じだと安心する。
「マズローの5段階欲求説の下から3つ目:社会性/帰属性の欲求」:人は、何かに所属していたい。所属していたら安心する。
”自分もそのモノを利用する人たちの仲間になれる” という気持ちですね。流行を追う気持ちは、このセオリーで説明がつきます。
いづれにしても、権威は人の信用を得る近道です。
権威は
信用を得る近道です
(画像はイメージです/出典:photoAC)
たった二つだけといいながら、その二つの中身はけっこう盛り沢山です。なぜなら、セールストークにはセールストークの専門性があるからです。
ただ、これらのコツを一度身につければ、セールトークの指針として役に立ち、販売が、営業がますます楽しくなり、成果にもつながっていくと思います。
(画像はイメージです/出典:photoAC)