車椅子介助「走行時の安全安心の確保、順守事項の覚え方」/愛のさしすせそ


【車椅子の介助】

走行時注意事項の

わかりやすい覚え方

車椅子の介助で学習し身に付ける内容には、「車いすの構造や操作」以外に、「移乗の方法」「走行時の注意事項」という大切な事柄があります。

この頁では、

「走行時の注意事項」について、すぐ身に付く〔わかりやすい覚え方〕をご紹介したいと思います。

その合言葉が、

「愛のさしすせそ」です。

私がかつてサービス介助士の勉強をさせて頂いた時に、講師の方がおっしゃっていたのを書き留めておいたものです。

とても分かりやすかったので、直ぐ頭に入り、短時間で実践できるようになりました。今でも、呪文のように心の中で唱えて実践しています。

この覚え方について、私は、きっとテキストのどこかに載っているのだろう、サイトで調べたらすぐ見つかるだろう・・と、ずっと思っていました。でも、どこを探してもどこにも見当たりません。昨年は介護初任者研修の資格を取得させていただいたのですが、その学習内容にも、これから述べようとしている同じ解説はありませんでした。

既に介助の方法を身体に身に付けていらっしゃる方には当たり前の事柄ですが、

今勉強真っ最中の方、又は、なかなか覚えられない・・・何かいい方法はないかしら・・?と、思案されていらっしゃる方には最適の覚え方だと思うので、ここにご紹介いたします。

【愛のさしすせそ】

この音や字面だけだと、何か恋愛講座か何かのテクニックのことかしら・・・なんて思ったりするかもしれません。でも、違います。「愛」は車椅子をご利用される方への愛情の「愛」だとご理解下さいませ。

福祉に携わる時、必要なのは、【知識】【技術】【善意】【愛情】です。その【愛情】にあたるものです。そして、「さしすせそ」の部分が【知識】であり【技術】にあたります。残るは【善意】。温めてくださいませ。

それでは、

車椅子介助の基本注意事項/8項目の頭の文字をとって「あ い の さ し す せ そ」 解説いたします。

「あ」

・「あ」は、足の「あ」です。

「あ」で、足元を思い出しましょう。つまり、フットレストを含めた足元の安全安心の確保のことです。

車椅子の事故で多いのは、介助者が「フットレスト(足台)」を降ろすのを忘れたまま車椅子を動かして、車椅子に乗っていらっしゃる方の足を、車椅子と床(地面)との間に巻き込んで、足を骨折させてしまう事故です。

「あ」で”足元”を思い出し、フットレストは降ろしたか? フットレストに足を乗せて頂いているか? きちんと目視確認しましょう。

また、フットレストは、車いすから椅子へ、又はベッドへ移乗がするときには外しますね。「移乗時には外す」ということも、「愛」の「あ」で「足元→フットレスト→はずす」を思い出しましょう。

さらに、

「愛」の「あ」で”足元”=フットレストの”装着の有無”と”上げ下げ” を思い出したら、同時に手の位置の確認も、思い出しましょう。アームレストの上げ下げ、手の位置、肘の張り出し、等々・・・「あ」で足元/手元の安全確認をしましょう。

「い」

・「い」は「意思」の「い」です。

車椅子を利用される方にとって、車椅子は自分の足です。人は、無意識であろうと意識していようと、自分の意思で足を動かし、目的の場所へ移動します。車椅子も同じこと。車椅子ご利用者の意思を確認しながら、介助しましょう。

「の」

・「の」は「のんびり」の「の」です。

介助者には介助者の都合があるでしょう。特に介助を仕事としている場合には、○時までに◇◇をして、○時には**を終わらせて・・・、とスケジュールに追われていると思います。

でも、急ぐことは事故のリスクを大きくすることです。床や地面のちょっとした凹凸や、コーナーでの死角が、思わぬ事故につながります。

介助されている方からみれば、介助者の都合に無理やり合わせるわけで、ストレスだって溜まります。「のんびりいこう」と、自分に言い聞かせるくらいのゆったりさで介助しましょう。

「さ」

・「さ」は「坂道」の「さ」、「段差」の「さ」です。

坂道は後ろ向きに、段差を上るときは前輪を持ち上げて、前輪を段の上の乗せてからゆっくり進み、そして後輪を乗せていく・・・という基本を思い出しましょう。

街には必ずスロープがあるわけではありません。行く先々の足元に注意して、基本を大切にしましょう。

「し」

・「し」は「視線」の「し」、そして「死角」の「し」です。

介助者に見えているものが、車椅子に乗っていらっしゃる方にも見えるとは、必ずしも限りません。椅子に乗っていらっしゃる方の視線(目線)を気にしながら、同じ視線(目線)で行き先々のものや風景などを見るようにしましょう。それが車椅子の乗っていらっしゃる方への理解、そして安心につながります。

さらに、人ごみの中で車椅子の介助をおこなう場合、周囲からは車椅子を見ることができません。介助者にも周囲の人たちにも、死角が増えます。フットレストが前を歩く人の足にぶつかったり、建物の角では出会いがしらにぶつかったりするリスクも伴います。

「愛のさしすせそ」と唱えながら「し」を意識して、「視線」は同じにしているか? 「死角」があるぞ、注意注意・・と、正しい介助を追及しましょう。

「す」

・「す」は「ストッパー」の「す」です。

止まったら、ブレーキ(ストッパー)、かけていますか?  

何をするにしても、止まったら、すぐにブレーキが基本中の基本です。

「せ」

・「せ」は「説明(声かけ)」の「せ」です。

車椅子介助をしているとき、無言になってはいませんか? ただ、移動すればいい・・っていう介助だと、車椅子に乗っている方の居心地は、あまりいいものではありません。

風景の話をしたり、世間話をしてください・・ということではありません。それはそれで、コミュニケーションになるから好ましいのですが、必要なのは動作時の声かけです。

曲がるときに、何も伝えなければ、乗っている方は ”いきなり曲がった、びっくりした、乱暴だ” という印象を持たれます。

止まる、走行する、右に(左に)曲がる、了解をいただく・・・ひとつひとつの動作に声をかけましょう。それが、乗っている方の安心になります。

「そ」

・「そ」は「速度」の「そ」です。

「の」の「のんびり」でも書きましたが、速度をあげれば、事故のリスクは増えます。速さを競う競技ではないのです。安全安心を第一に介助していきましょう。

以下にまとめてみました。

「あ」 足元、手元の安全確認、フットレストの上げ下げ、足と手の位置。

「い」 乗っている方の意思を尊重して介助しましょう。

「の」 のんびりいきましょう。

「さ」 坂道と段差に気をつけて、坂道用、段差用の基本操作を遵守しましょう。

「し」 視線を同じにして、死角があることに注意して介助しましょう。

「す」 止まったら直ぐ、ストッパー(ブレーキ)をかけましょう。

「せ」 黙った操作はNGです。動作のひとつひとつに声をかけ説明しましょう。

「そ」 速さは事故のリスクを高めます。速度はゆっくりいきましょう。

〔その他の注意〕

視聴覚障害の方には特に必要な事柄(もちろんそうでない場合でも大切な行動)

・声をかけてから、お身体にさわる。

・正面から、声をかける。

・車椅子で移動中、乗せたまま一人にしない。

・乗っている方の側に立つ時、どちらに立って欲しいか、お聞きしておく。

などが、あげられます。

明日もいい日でありますように。