視覚/聴覚/触覚~お客様の優先五感を活用してセールスする方法


(画像はイメージです/出典:photoAC)

価値基準が人それぞれであるように

五感の優劣も人それぞれです

実は、お客様の五感の違いを

セールスに活かせます

(私が実践で得た成果を基に書いています)

私はコロナ流行の前のこと、ある炊飯器の実演販売に取り組んでいたことがあります。店頭で実際にご飯を炊いて試食をしていただける実演販売でした。

「美味しく炊けるんです」と100回言うより ”論よりは証拠” ”百聞は一見に如かず” なので、試食という手段”は、美味しさという提供価値”をきちんと伝えることができる最も効果的な手段でした。・・コロナ感染防止の観点から、試食できなくなってしまったのは痛手です。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

さて、ここで販売スタッフの心得として知っておきたいのは、人の五感は、その優劣や強弱が人によって異なるということです。 

例えば、「あの人は味にうるさい」と云うのはその典型であり、その場合「あの人の味覚は五感の中で秀でている」ということなのです。

それでは、セールスの現場において、目の前のお客様の五感は、・・・視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚・・・どの感覚が強いのか?どの感覚を優先する人なのか? ・・・本人は無意識であり、決して明確に測れるものではありません。でも、確かに程度の差はあるのです。

なので、それらを見分けることによって、より効果的なセールストークを生み出す可能性が、そこに生まれるのです。この頁では、私が取り組んだ実演販売時の実例をあげて、解説いたします。

(画像は筆者/右の二つが炊飯器。左は同時に実演販売していたトースター)

1.感覚の違い、その大小

(1)試食をお勧めしても受け取らず、商品の評判ばかりを聞いてくるお客様

「ねえ、売れてるの?」「どんな人が買っていくの?」「今日、何台売れたんですか?」・・・試食は後回しにして、このような質問をされるお客様がいらっしゃいます。

このようなタイプのお客様は耳情報、つまり聴覚に敏感です。

なので、炊き具合や味のことは一旦横に置いておいておきます。そして「これ、雑誌掲載の記事です。見てください、ここに人気NO1って書いてありますでしょう」というようのような耳情報を中心にしたセールストークで商品の提供価値へと話を繋いでいきます。

すると、お客様の商品への評価はどんどん上がっていくんですね。なので、販売機会が増えていきます。

(2)とにかく味を確かめるのが一番なお客様もいらっしゃいます。

「試食できます?」「これ、おいしく炊けるの? ほんと? うあー食べていい?」「ほんとだ、おいしい!、これいいね!」・・というような感じでスタッフに迫ってきます。

⇒ このようなタイプのお客様に、商品のデザインや色、機能や操作性の説明をしてもなかなか聞いてくれません。「おいしい」を優先するので、例えば(1)の話のような内容については、味の確認が済むまでは、聴く耳を持ってくれません。

まずは味が大事なのです。評判なんかは関係ありません。自分の味覚第一なのです。つまり五感の中で味覚が優先されるのです。

なので、極端な例だと、試食だけで購買判断して、あとの情報(使い方等)は確認するだけ、というお客様もいらっしゃいます。そういう場合は試食さえあれば、セールストークは殆ど必要ないまま購入へと至ります。

(3)真っ先に、使い勝手を気にされるお客様もいらっしゃいます。

「すみません、これ、開けてもいですか?」、「これ、ちょっと持っていい? 重さはどれくらいなの?」、「サイズを教えてくださる?」、商品を手で撫でて「いい質感ね」。・・・評判や味は、あとまわしです。

⇒ このようなタイプのお客様の五感は触覚を優先しています。なので、「このダイヤル回してみてください」とか、「お手入れは、ここを外して、こうして・・・簡単でしょう」とか、「持ちやすいから移動するの楽ですよね」などのトークを優先して使います。

お客様がそれらに納得されると、お客様はニコニコして「これ、いいですね」と言ってくれます。

(画像は筆者の実演販売時のもの)

・(1)は聴覚、(2)は味覚、(3)は触覚を、それぞれ無意識のうちに優先しています。ただ、これらはあくまで優先です。優先した感覚が満たされれば、次の感覚を満たすために、次の話題や行為に入っていきます。

たとえば、「これ、ちょっと持っていい? 重さはどれくらいなの?」が解決したら、「ちょっと食べてもいいかしら」とか、「評判はいいの?他のメーカーのと何が違うの?」というように、優先する第二第三の感覚を確かめることに移っていきます。

「感覚の癖は人によって異なる」・・これを知っているだけでも、営業トークの選択肢は増えて、より多くのお客様とコミュニケーションをとることができます。

そして大事なことは、ペーシング(お客様のペースに合わせる)というコミュニケーションのテクニックです。

2.「おいしさ」を言葉で五感に伝える工夫

1.視覚優位のお客様 ⇒ イメージしやすい視覚的情報を提供

・「みてみて、このふっくらと、つやつやした輝き! 上手に炊けているでしょう」

・「この一粒一粒の際立ち。これが、お口の中で、おいしさを感じさせてくれるんです」

・「顔がですね、自然とゆるんで、笑顔になるんです。家族みーんなが笑顔になるんですよ

・「ご飯の一粒一粒が立って、そして輝いているって、こういうことを云うんですよ」

2.聴覚優位のお客様 ⇒ 耳で理解する言い方をトークに盛り込む

・「たまに来る姑にですね、お米、高いのに変えたの? って言われちゃいました。それくらい、普段のお米をですね、極上のおいしさに炊き上げてくれるんですよ」

・「妻が言っていました。こんどお母さんが来た時、自慢しちゃおうって

・「よく極上の美味しさって言うじゃあないですか。あれって本当なんだって、これで炊いたご飯を口に入れた時に思いました」

3.2つ以上の感覚を盛り込んでお客様の反応(感覚優位)を探る

・「いい香りがしてですね、一口食べただけで、あごが落ちそうな位、おいしかったです」(嗅覚/視覚

・「ご飯が甘くてほっぺたが落ちそうなおいしさって、きっとこのことだと、思いますよ」(味覚/視覚

・「ご飯のいい味を引き出してくれて、おいしさと甘みが、お口の中で広がるんです」(味覚/触覚

・「おにぎり? いいこと聞いてくれました!  実は、冷めてもおいしいんです」 (視覚/聴覚/触覚/味覚

「ひとくち噛むでしょう。そして、ふた口噛むでしょう。もうその時、自然と笑みがこぼれてきて、とっても幸せな気分になるんです。ご飯がおいしいって、大切なことですよ」触覚/視覚/聴覚/味覚

☆これらのトーク使って、まずはお客様の反応を見て下さい。目の動き、頬のゆるみ方、身体の方向、お客様の言葉、・・・それらによって、お客様の優先感覚を探ってみてください。そして、ペーシングを意識しながら、お客様の優先感覚に合わせたセールストークをするのです。

そすれば、お客様と分かり合える可能性が増していき、コミュニケーションはさらに活発になって、販売機会が増えていきます。

販売を楽しみましょう!