クローズドクエスチョンはお客様の足を止めるアプローチのテクニック


(画像はイメージです/出典:photoAC)

小売りの店頭

ただ

声を枯らして呼び込みしても

お客様は

立ち止まってくれません

店頭で「いらっしゃいませ! 只今〇〇が◇◇%OFF、是非お立ち寄りくださいませ!」というような、大きな声をあげている店員さんを見かけます。店頭に活気を持たせることには繋がっていますが、お客様が積極的に立ち寄るという効果は声の大きさと量ほどにはありません。

何故なら、目線にチラッと入った視覚情報、そして耳に入る聴覚情報、それだけで、お客様は自分に必要かどうかを瞬時に判断してしまうからです。そして、大抵の場合、私には必要ないわと思ってその場を立ち去ります。何故なら、珍しい光景ではないからです。

情報化時代の今日です。パッと見てサッと聞いて、それがだいだいどういうものなのか、とっても魅力的なものであるかどうかは、確かめなくても分かっちゃうからです。

本当に分かるという意味ではなくて、持っている知識と経験の引き出しの中に、分類してサッと入れてしまうという意味です。瞬時類型化してしまうということでしょうか。

そして、街を歩けばいたる所にお店があります。いちいち立ち寄っていたら時間がいくらあっても足りなくなるということを、お客様はよく知っています。

なのに、店員さんは成果につながらないまま声出し続けています。

ここは、お客様が立ち止まってくれる率が少しでも上がる方法を、具体的に指示して指導することが、その店の上長の大切な役割だと思います。

1.立ち止まっていただく率を上げる方法

景気づける大きな呼び込みはあってかまいませんし、あった方がよいでしょう。ただ、それだけでは足りません。その大きな声かけの呼び込みと並行してもうひとつ、きちんとお客様を見据えてマンツーマンで声をかけることも大切です。

その時の声かけは必ずクローズドクエスチョンを使いましょう。何故なら、お客様はYESかNOの返事をすればよくて、心理的な負担が少ないからです。

「いらっしゃいませ。お客様。〇〇を見ていただいて、ありがとうございます。お客様はこの〇〇、もう使っていらっしゃいますか?」

お客様が、チラッとでもこっちを見てくれたら即「〇〇を見ていただいて、ありがとうございます」と、感謝を伝えましょう。お客様は、ありがとうございますと言われて嫌な気分にはなりません。そして再度「もう使っていらっしゃいますか?」クローズドクエスチョンで畳みかけましょう。

ここで大事なのは、お客様に一瞬でも立ち止まっていただけるということです。

立ち止まってくれるとどうなるか・・。

他のお客様が、私も・・という気持ちになって、立ち止まりやすくなるという利点があります。この連鎖がとても大切です。なので、最初に立ち止まっていただいたお客様は、買うとか買わないとか関係なく、一生懸命大事にしないといけません。なぜなら、次のお客様を吸い寄せてくれる磁石の役割をしてくれるからです。

2.お客様の反応への対応方法

「〇〇は、もう使っていらっしゃいますか?」とか「□□は、もうご存じですか?」とお聞きした時、お客様の実際の反応は3通りです。

ひとりは、聞こえていても店員の声かけを無視して通り過ぎます。

ひとりは、首を横に振ったり、「いいえ」と口にしたり、NOを意思表示します。

ひとりは、首を縦に振ったり、「ええ」とか「はい」とかYESの返事をします。

なので、店員は、NOとYESの対応についてだけ考えて予習をしておけばいいんです。ということは、接客って、商品知識や礼儀作法以外にも、予習することがあるんですよね。

・NOの時には、こんなふうに対応します。

「ちょうどよかったです! お客様、今、この〇〇、◇◇%OFFになっているんです」

「ですよねー。実はわたしも最近まで知らなかったんです。ごらんください。この□□、~なんですよ。すごいでしょう!」

これ、前者は「お客様はこの機会を知ることができて運がいいです」とお客様を持ち上げ、後者は「私も知らなかったんです」と伝えて、お客様を安心させています。これが、お客様の気持ちに寄り添うという具体的な方法です。

よく接客の指導で「お客様の気持ちに寄り添って・・」とか「お客様のお気持ちになって・・」とかいいますが、その先の具体的な事例がこれです。

このように、お客様の気持ちを大切にしていくところから接客を始めることが大事です。もしも、この辺りのことを心理学の中で自習するのなら「自己重要感」を検索してみて下さい。きっと役にたつと思います。

そして、

・YESの時には、このように対応します。

例えば「まあ、お客様、さすが! 流行に敏感なんですね!」と誉めるのです。人はほめらたら嬉しいですから、耳が開いて店員さんの言葉に耳を傾けるようになります。

このようにして、ひとりのお客様に直接声をかけて立ち止まらせ、そしてお話しをすることで、二人目三人目のお客様に至っては、特に声をかけなくても立ち止まりやすくなるのです。そうすれば、その店は本当の活気を得ることができます。

上長は、そのような指導をして、スタッフのモチベーションを上げてほしいです。

このようなコミュニケーション、実は、賑わっているお店ではその実際を見聞することができます。特に昔ながらの商店街とかに多く見られます。

セールストークの勉強場所は実は身近なところにもあるのです。