比較購買を成功させる帰属意識を活用したセールストークのテクニック


(画像はイメージです/出典:photoAC)

比較購買

意識していますか?

(私が実践で得た成果を基に書いています)

買物をしていて、コレとアレを迷っているとき、店員さんに「アレよりもコレがいいですよ」って言ってもらえると安心してコレに決めることができる場合があります。

「えっ? なぜですか?」と質問をして、「コレの方が〇〇〇なんです」なんて言われて、さらに詳しく説明を受けたりすると、なおさら「じゃあ、コレください」となりませんか?

コレに決めたのは、実はコレと比較をしたアレがあったからです。コレをアレと比較することによって、コレが良いのだと思うことができたのです。

なので、セールストークにおいても、コレを売るためにコレだけを説明するのではなく、アレを引き合いに出すことによって、コレを引き立たせることができる・・・というテクニックが成り立ちます。

アレをわざと作って接客すれば、コレを上手にお勧めすることができるのです。

そして、販売スタッフに大事なことは、お客様とコミュニケーションをとりながら、お客様の嗜好やニーズをきちんと把握することです。なぜなら、コレとアレは自由に入れ替えてセールスしてよいからです。

お客様の嗜好やニーズに合わせたコレを提示して、そこから少しずれたアレを引き合いに出す。そして、アレよりもコレがお客様には合っていますよ・・とお伝えする。そうすることによって販売率は上がります。

さて、アレとコレを比較してお勧めする「購買比較」に取り組むとき、実は、そこには人が本来求める「帰属していたい」という意識が働いている場合があります。これを認識して取り組めば、今までよりも成果は上がります。

1.帰属していたい

マズローの五段階欲求説は既にご存じだと思います。販売士の勉強でも必須項目ですね。・・・そこで述べられている、人がみな欲求する事柄・・・、生理的な欲求(食べて、寝て・・)、安全安心の欲求(危険から身を守る)、そして三つ目、「社会的欲求」とされているもの、それが「帰属意識」です。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

人は、どこか、なにかの集団や組織、家族・・、会社、会社の中での仲間、学校ならクラス、サークル、そしてそれぞれのグループ・・・、どこかに属していることによって、無意識ではありますが、実は「安心」していられます。

極端な例では、恋人という存在さえも「帰属意識」として理解することができます。自分は彼もしくは彼女と恋人という関係に帰属しているという理解です。その帰属意識が安心を生みます。もしも失恋をしてしまったとき、直ぐに別の相手を見つけようとする場合は、別れた彼彼女を愛していたとういうよりも「私は誰かと恋人関係の中にいたい」という帰属意識が強いのだそうです。

それはつまり二人は恋人というひとつの塊だということです。そこには、お互いに恋人として認め合っているという安心がそこにあります。私はあなたに恋人として認められている、あなたは私を恋人として認めている。二人いればひとつの塊です。なので、二人はお互いにお互いの心に帰属しているといえるでしょう。この考え方によれば、もしも失恋をしたら、別の相手にその帰属を求めればいいという考え方が成り立ちます。

家族、友達仲間、会社・・それらのどこかに属していることが、ひとつの社会性であり、また生きていく上でのひとつの安全安全でもあります。

そのような人の性質を、もしもセールストークに活かせるとしたら・・・、以下のような事例を上げてみました。

2.帰属意識の活用

お客様の帰属先を探り、お客様をその帰属先へ誘導してお客様に安心を与えれば、購買意欲に繋がります。もちろん、この場合、帰属する手段は販売したい商品を購入することです。

(1)今、お客様は、どこに帰属しているのか。

〔勉強事例〕例えば、フライパンの販売を例にしてみましょう。

スタッフが知るべきことは、今、目の前のお客様が、フライパンを使う1人の生活者として、フライパンへの評価をどのように認識している人たちのグループに所属しているのかを、知ることです。

難しく書いてしまいましたが、今、目の前のお客様は以下のどこのグループに所属しているのでしょうか。

フッ素加工が一番と思っている 

焦げないのが一番と思っている 

鉄製を手入れしながら使うのが一番と思っている

できるだけ安いのがいいと思っている 

ブランドが大切と思っている 

TVで紹介していたアレがいいと思っている

餃子をよく焼くので、餃子を上手に焼けるのがいいと思っている

・・・いろいろあると思います。

そして、スタッフであるあなたは、どのグループにお客様を連れてきたいのでしょうか。

このように整理して考えると、お客様の心の何を解きほぐし、どのような価値基準を示していけばいいのか、自ずから答えは見えてきますね。

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(2)具体例

〔勉強事例〕加湿器。季節柄、今は加湿器の売場でセールスしている、私の実例です。

先日、リズム(株)の新商品「MIST300」という加湿器が、私の担当している店頭に並びました。売価は43,780円です。

(画像は筆者撮影/2022.11月)

売場の加湿器の品揃えは、デスクタイプの2~3千円代のものから、10畳をカバーできる1万円前後程のものまで。主流は5~8千円代の超音波式加湿器という売場です。

上の写真の「MIST300」、加湿の最大能力は300ml/h、広さでは5畳~8畳ほどをカバーできます。ただ、この加湿能力を求めるのであれば、他の商品だと7~8千円で購入できるのです。その品揃えの中にあっての43,780円です。

もちろん、デザイン、プールレス(水タンクの下に水を溜めない)機能、お手入れしやすいなど、新しい魅力あるポイントはあるのですが、それにしても高い・・と私は思いました。

<作戦>

わたくしは、セールストークを組み立てるときに、①加湿器の機能、②新機能(デザイン、プールレス、お手入れしやすい)に加えて、③お客様の自尊心を満たす・・・この③が購買を左右する大事な要素と考え、これを訴求しようと考えました。

詳細は省きますが、このテクニックで売る事ができました。クロージングは以下でした。

<実践>

お客様:「・・・でも、高いです」

私  :「そうですよね、高いですよね。ただ、お客様。この加湿器には、他の加湿器にはない魅力ある機能がありますし、何よりもお客様、こんなにステキで、こんなに高い加湿器がご自宅にあったら、自慢できますよ

<解説>

1.お客様が「(価格が)高い」とおっしゃったら、そのワケを説明しようとするのではなく、まずは共感する「そうですよね、高いですよね」・・お客様を承認して安心を与えます。

2.つなぐ接続詞は「ただ」です。これで、話題の前言を否定せずに、次に繋げることができます」

3.既に説明済の商品の機能と提供価値を「魅力ある機能」「ステキ」で代弁しました。

4.「こんなに高い加湿器がご自宅にあったら、自慢できますよ」とクロージングしました。これはつまり、「ここにある他の加湿器を購入しても自慢できませんよ」という意味でもあり、比較購買を実践しています。

*経済的に余裕のあるお客様であるならば、かつ、自慢したいことを増やしたいお客様なら、このセールストークは効果があります。

*もちろん、そのお客様がそのような性質に尖っていることを、お客様とのコミュニケーションの中から探っていくという作業は、もちろん前段階として必要です。

(2)スタッフはお客様をどのグループへ誘導したいのか

スタッフのあなたは、

①お客様がどのようなグループにいたいのかを探り、

コレを買えば、そのグループに行けることを説きます。

”どのグループに所属していたいのかという理解の仕方”を意識して誘導するのと、意識なしにやみくもに誘導するのとでは、成果がことなります。なぜなら、うまくいかなかったときの軌道修正、つまり反省の仕方が、意識しておこなった時とそうでない時と、大きく異なるからです。

上手くいかない時の分析が容易です。これは大変ありがたいことです。

そのためにも、行動は、筋道をたてて(計画をたてて)進むのがよいかと思います。

*比較購買を推し進める時には、アレとコレ、それぞれのグループに、自分がお客様を誘導するのだという意識で接客に取り組んでみて下さい。きっと活路が開けると思います。

販売を楽しみましょう