熱意が生むリフレイン/「繰り返し」をセールスの話術として活用する


(画像はイメージです/出典:photoAC)

伝えたいことを、

どうしても伝えたい時、

言葉は、

重なります。

歌の世界、CMの世界では、それが顕著です。

たとえば、

AKB48のヒット曲「希望のリフレイン」

この歌で”どうしても伝えたいこと”、

それは「好きすぎて」・・・一度に3回繰り返され、その歌詞は三ヵ所に登場します。

♪好きすぎて(好きすぎて)

♪好きすぎて(好きすぎて)

♪好きすぎて(WOW WOW WOW・・・)

さらに「君だけが」・・・も3回繰り返されて、それが三ヵ所に登場します。

♪君だけが(君だけが)

♪君だけが(君だけが)

♪君だけが(WOW WOW WOW・・・)

これで「僕は、君だけを好きすぎている」ということが十分に伝わるわけです。

そして、

君だけを好きすぎてしまっているから、

歌詞の冒頭「この角まがったら 君がいると」分かってしまい、好きな君と出会える運命も偶然も、グググッと引き寄せることができるんだ、なぜなら、君だけを好きすぎているから、という内容になっています。

より強く、

確かに伝えたいことは、

何度も何度も言う。

この繰り返しによって、より共感し、自分のことのように重ね合わせて心を動かす人が増え、そして、この歌はヒット曲として育っていった、”繰り返し”の素晴らしい効果効能”ですね。

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伝えたいことを、短い時間で伝えなければいけないCMには、さらに顕著な事例があります。

「たらこ・たらこ・たらこ」は、2006年第48回のレコード対象特別賞を受賞した歌です。元々はCMで使われていたものを、CD用に作り直して世に出た歌だそうです。

この歌の ”繰り返し” はすごいです。抜粋してみましょう。

たらこ たらこ たっぷり たらこ

たらこ たらこ たっぷり

たらこが やって来る

たらこ たらこ つぶつぶたらこ

たらこ たらこ つぶつぶ

たらこが やって来る

たらこ たっぷり たっぷり たらこ

たらこ たっぷり たっぷり たらこ

「たらこ」×16回

「たっぷり」×6回

「やって来る」×2回

「つぶつぶ」×2回

このかたまりが3ヶ所登場します。

「たらこ」を形容する言葉は「たっぷり」と「つぶつぶ」だけ。たっぷりは「たらこ」が多いことを表しているので、「たらこ」そのものの状態を形容しているのは「つぶつぶ」だけです。これは、他に形容詞を探すよりは「たらこ」を繰り返した方が、よりいっそう効果的だという判断があったからでしょう。

この歌は、対句も多用されています。

おなかが鳴ると やって来る

なかまをつれて やって来る

パスタをゆでると やって来る

きれいに並んで やって来る

年がら年中 やって来る

赤いおそろい やって来る

「やって来る」状況を何通りもイメージさせて、”繰り返し”しています。

このような言い回し、実は、セールストークを組み立てる時のヒントにもなりますね。

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伝えるためには、

”繰り返す”。

修辞法では ”反復” と解説されていますが、大事なのは、とにかく「伝えたい」という熱意です。熱意が言葉になったもの、それが ”繰り返し” です。

熱意に理屈は必要ありません。

繰り返し=熱意

ということは、日常においても仕事においても、相手先様が繰り返す言葉があったら、相手先様は「あなたに ”それ” を、ちゃんと分かってほしい」と思っていると、きちんと意識して理解した方がよいということです。

お客様が繰り返し口にされる言葉がある。その時はその話題に共感し、お客様の関心の在処をさぐりながら話していく、それがコミュニケーションを上手に繋いでいくコツになんですね。

このような対応は、普通にできている人は多くいて、そのような人にとっては課題として認識する必要はありません。

でも、話し下手であるとか、コミュニケーションが下手という私のような人間や、セールスが上手くなりたいと思っている人にとっては、「繰り返し表現」という簡単そうに思える話術ひとつにしても、意識して言葉を選び対応していくことが大切になります。

相手先様が繰り返す言葉

それがあなたに

分かってほしい事です

大量のバラの花束・・量の多さは、時に、気持ちの大きさを表し、強い気持ちを相手に伝えることができます。同じ言葉の繰り返しも、同じ効果なのかもしれません。愛情表現に繰り返しは多いですからね。

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それでは、店頭小売の場面で、面と向かって、相手先様が”繰り返し”てくる状況を具体的に考えてみましょう。

たとえば・・・上野駅を降りて、アメ横に行くと、威勢のいい声が聞こえてきます。

「安いよー 安いよー 安いよー」

「今朝、銚子港で水揚げされた、ど新鮮なサバだよ!サバ、サバ、サバ! 冷凍じゃあないからね、奥さん! サバが安いよー 安いよー!」

店頭では、受け手の反応をその場で確認できるわけですが、スタッフの対応によって成果が異なってきます。つまり、売上の増減に関わってきます。

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「安いよー 安いよー 安いよー」「サバだよ、新鮮なサバ、サバ、サバだよ!」を連呼する店頭を想像してみて下さい。

じーっとサバを見ているお客様に、対応は大きく二つ想像できます。

「奥さん、サバが安いよ、お得だよー! 買って買って!」と言い続ける店員。

「奥さん、最近、サバ食べた?」と質問をして、YESかNOの返事をさせてコミュニケーションを繋ぎ、お客様の嗜好を知ろうとする店員。

あなたが店員だとしたら、どちらの店員になりますか?

前者の対応は、お客様に買うか買わないかの二者択一を迫っているのに対して、後者の対応は、コミュニケーションを繋いで、お客様との関係が発展させていける可能性があります。つまり、売上につながる可能性が高い、販売率が高いです。

どういうことかというと、

お客様が、ウンと首をたてに振ったら、たとえば・・・、

「美味しいよねー、サバ。焼いたの? 煮たの? それとも、酢で〆たのかな?」

・・・このあいだは焼いたから、今日は煮てみようかなと、イメージを膨らませるきっかけを作ることができるかもしれません。それが買う理由になるかもしれません。

お客様が、ウウンと首を横に振ったら、

「ちょーどよかったじゃあない。サバはさ、身体にいい栄養素たくさん含んでいるからね、たまには食べなきゃあ、ねっ、奥さん!」

・・・そうね、栄養のことも大切よね、とニーズを掘り起こすことができるかもしれません。それが買う理由になるかもしれません。

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「安いよー 安いよー 安いよー」の連呼で全くかまいません。「安い」ことも買う理由の大切な理由ですから。

大切なのは、そのトークに対するお客様の反応をみて、対応を変えることです。

そのためには質問(クローズドクエスチョン)から入り、コミュニケーションを繋げていき、お客様の頭の中の、表に出てきていない事柄をつかむことです。

お客様は、調理法のことが気になっているかもしれません。

お客様は、”家人が気に入るか気に入らないか” を気にしているのかもしれません。

お客様は、多めに買って冷凍にしておくことを考えているかもしれません・・・。

もしも、多めに買って冷凍にしておくことを考えていることが分かったら、

「冷凍にしておけば、食べたい時に食べれるから便利だよねー。冷凍、冷凍、冷凍、賢い買い物だねー、奥さん」

・・・というように、冷凍を”繰り返す” ことによって、さらに「賢い買い物」とお客様の自尊心を擽ってみる、そうすることによって、購入を決心させる方向に持っていけます。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

魚屋さんの場合、お客様に魚を買って食べていただくことが、その役割です。それを達成するための熱意が強ければ強いほど、連呼などの ”繰り返し” は多くなると思います。

ただ、商売は売上を上げることが大きな目的にありますから、お客様のニーズをつかんで、お客様が聴きたいことを ”繰り返す” ことが必要になります。

つまり、

熱意にも一方で冷静さを持ち、”繰り返す” 言葉を状況に応じて選び直す必要があるということです。それが、面と向かった場合の ”繰り返し” のコツです。

単純なことですが、

営業や販売では、

お客様が欲している事柄を、

”繰り返し”ましょう。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

修辞技法としての”繰り返し”には、畳語反復法同語反復などがあります。

活用すれば役に立ちます。ただ、それらはあくまで理屈です。

体験済みだと思いますが、理屈だけの実践では、なかなか効果につながりません。

理屈に照らし合わせた実践は、熱意があってこそ、より効果的です。セールスの場面では「伝えたい」という熱意が、最も必要なのです。

ですから、まずは、目的を目ざす ”熱意” を大切にしましょう。

熱意があれば、修辞法云々は横に置いておいて、自然と言葉は多くなり、伝えたい事は何度も口に出てきます。

とにかく、

強調したいことは、

”繰り返してみる”、

営業や販売では、相手先様が欲している事柄を見つけて、それを ”繰り返したら” もっと効果的。それを、相手様の反応を見ながら、意識して実践する。単純ですが大事です。

明日もいい日でありますように。