セールストーク作成の基本①段取/提供価値とベネフィットを明確にする


(画像はイメージです/出典:photoAC)

セールストークの流れには

定石があります

この定石を身につけたら、あとは、その時々の状況に応じて、お客様の反応に合わせながらカスタマイズして、クロージングに繋げていけばいいのです。

セールストークの定石は以下のとおりです。

これは、私が小売りの店頭で実践していた、そして今も実践している定石です。

下の図、セールストークはアプローチを出発点にして、時計まわりに進んで下さい。

(画像:イラストの出典はphotoAC、作図と構成/レイアウトは筆者)

〔アプローチ〕

お客様に「お客様、これ、ご存知ですか?」「お客様、これ、もう使っていらっしゃいますか?」と、クローズドクエスチョンで問いかけて、コミュニケーションのきっかけを掴み・・

〔ニーズ想起〕

お客様に「こんなことで、困っていませんか?」「こんなことで、困ったりしたこと、ございませんか?」と、ここもクローズドクエスチョンで問いかけて、お客様にニーズを想起させて・・・

〔解決策/メリット〕

お客様に「これを使うとですね、もう困らなくていいんです」「これが、今日までのお客様の苦労を解決してくれます」「これを使ったら、こんなにいいことが、あるんですよ」と、ハッピーな未来をお伝えします。

その時、お客様が興味を示されたら・・ここで初めて、商品の機能特性について、より具体的に説明をしていきます。

もちろん、お客様の”買わされたら嫌だ”という警戒心を薄めて、お客様の聞く耳を聴く耳に変えていかなければいけません。なので、「買う買わないは横に置いておいて、まずは聴いて下さいませ。この情報はタダですからね、タダより安いものはありませんよ」などのような、お客様に安心を感じて頂けるようなトークを挟みながら、商品説明をおこないます。

〔クロージング〕

商品説明をしながら、ミニクロージングと呼ばれる”小さいクロージング”をおこない、お客様の反応を見ていきましょう。その過程を経て、いよいよ最後の決め台詞を、お客様にお伝えしましょう。

ミニクロージングは、アプローチからクロージングの間に挟み込む、お客様の何を満たせば、お客様がこの商品を購入する気持ちになるのか、それを知るためのセールスの道具です。これに使う言葉は、お客様によって商品によって、いろいろです。これだ!というものはありません。

たとえば「お客様、これ買って帰ったら、ご家族みんな、喜んでくれますよ、いかがですか?)」とミニクロージングをした時、お客様が「それはそうかも・・」と肯定的な反応をするか、それとも無反応なのか、それとも「そんなこと、ないわよ」と否定をするのか・・・、お客様の反応によって、次のトークを決めていきます。

クロージングは、そのトークによって、お客様が購入を決心したら、それがクロージングです。セールストークの勉強会などを開くと、参加者から「必ず買ってくれるクロージングを教えてください」ときかれることがありますが、そんな都合のいい文句はありません。状況に応じて言葉を選んでいきましょう。

<以下は、私の事例です>

私は先日、店頭実演販売で刃の幅の広いキャベツピーラーのセールスをおこないました。その時、飾り料理を作る技を披露して、そのキャベツピーラーに付加価値を付けてみました。

その時のミニクロージングは「お客様、キャベツの千切りだけではございません。こんな素敵な飾り料理を作ることも、できるんです」・・・これで、お客様の反応を見ました。

(画像:筆者のピーラー店頭実演販売にて撮影)

そして、さらにいろいろな事柄をトークして、多くのお客様に購入を決心して頂けました。その時のクロージングの一例は・・・は次のトークです。

「お客様、チャレンジしなかったら、もったいないですよ」

このトーク直後にお客様は「ください」と言ってくれたのです。私は、キャベツの千切りだけではなく飾り料理も作れるという一石二鳥の「得」に対して、このピーラーの「得」を知った今、これを使わなかったら「もったいない」という、損失を回避させたい心理に訴えたのです。

以上のようなセールストークの流れをスムーズにおこなうためには、段取りに取り組みましょう。いわば、予習ですね。何事も、予習が一番大事です。

まずは

セールストークの定石を

実践できるように

段取りに取り組みましょう

・事例として全自動コーヒーメーカーを扱ってみました。

(画像の出典:photoAC)

1. 機能特性を棚卸しましょう。

取り扱い説明書に書かれている機能特性について、書きだして整理整頓しておきましょう。

2.メリットを棚卸して台本を作りましょう。

「こんな機能特性があります。なので、☆☆☆なんです」と云う時の、☆☆☆がメリットです。パッケージに書かれている美辞麗句なコピーも参考になります。例を上げてみましょう。

(例)全自動コーヒーメーカー:「タイマー予約」ができる。

「このコーヒーメーカーには、タイマー予約機能がついています。なので、朝、少し早く起きて、豆と水をセットしてスイッチを入れる必要はありません。夜のうちにセットしておけば、このコーヒーメーカーが、お好みの時間に美味しいコーヒーを淹れてくれるんです

3.ベネフィットを想定して台本に加えましょう。

・ベネフィットとは、メリットによってもたらされる ”良いこと” です。主に感情に支配されることと理解しておいてかまいません。お客様が個々に感じる事柄なので、誰にでも共通のベネフィットは少ないです。お客様との会話を通じて探っていきましょう。

ex:「眠たい朝に、ベッドの中で、奥さんと ”どっちが先に起きてコーヒーを淹れるか” なんて、もうもめなくていいんですよ。このコーヒーメーカーが忙しい朝を、穏やかな朝に変えてくれるんですよ。嬉しいじゃあありませんか

ex:「朝、美味しいコーヒーの香りで目が覚めるなんて、ステキじゃあないですか。なので、コーヒー豆にも、これから詳しくなっていきますよ。だって、豆の違いを、いろいろ試してみたくなるますからね。毎日の生活の中に、ひとつ楽しみが増えるんです。いいでしょう?

〔ベネフィットについて〕

※世間では、機能特性をメリットとして捉え、メリットをベネフィットとして理解するという解説する場合もあるようです。商品の性質によっては間違いではありませんが、それで全てのベネフィットは説明できません。

ベネフィットには感情が伴っていることを重要視して下さい。

「タイマー予約機能」そのものには感情は関係ありません。朝、指定した時間にコーヒーができていること自体は便利ですが、それで夫婦仲が円満になるかどうかは分かりません。でも、もしも、朝の忙しさが緩和されて、夫婦が少しでもゆったりとした気持ちで過ごせたら、それはベネフィットです。

何故なら、ゆったりとした気持ちで過ごせる ≒ 安心 ≒ これを買って良かった、嬉しい・・・からです。

※ここでは、お客様の利益を最大に考慮して、ベネフィットの事例をあげてみました。ベネフィットは、お客様の個々の事情によって異なるものですから、本来は、お客様との会話の中から見つけていくものです。

ただ、それでは、現場に臨んだときに間に合いません。

なので、営業や店頭販売においては、予め想定できるベネフィットを二つ以上、頭の中の引き出しに用意して置きましょう。それだけでも、気持ちに余裕をもって営業や販売にあたることができると思います。

※ベネフィットの探し方は、

その商品を使ったら、「いつ」「誰が」「どんな時」「なぜ」ハッピーになるのかを考えることで、想定できます。一生懸命に想像してみましょう。

4.機能特性、メリット、ベネフィット、各々の伝え方に工夫を凝らしましょう。

伝える手段は言葉だけですか? 言葉だけでは伝わりにくいですよ。

たとえば、一生懸命に伝えようとすると、自然と身振り手振りが加わりますね。これは大切なことです。つまり、そこに、”この人は一生懸命に説明している” という視覚情報が加わるからです。

視覚情報のご提供はとても大事です。

お客様に、トークに加えて、”目で見て理解する” という情報をご提供することによって、お客様の商品への理解が深まるからです。なので、トークを補うフリップは、とても大切な役割を持っています。その内容も吟味しましょう。

さらに、触れるものなら触っていただく、その場で操作できるものなら操作してみる、さらに、食品ならば香りと味が(試食試飲)大切な伝えるツールになります。つまり、五感をフル活用していきましょう。

また、口コミを披露したり、TVや雑誌掲載の事例を紹介して権威付けをしたり、さらに、自分自身がユーザーとしての意見や感想を述べることも大切です。

このようにして、機能特性、メリット、ベネフィットを、具体的にどのような手段でお客様にお伝えしていくのかについて、作戦を立てておきましょう。内容によっては、事前に練習が必要になってくる場合もあります。

ここまでが段取りです。

先にも述べましたが、以上の事柄をセールストークの勉強会などで述べると、参加者からは必ずといっていいほど、次の質問が出てきていました。

「クロージングに相応しいトークを教えてください」

「これなら必ず売れるっていうトークを教えてください」

知りたいと思う気持ちは分かります。でも、そんな便利で都合のいいセールストークは、残念ながらありません。

クロージングは、お客様一人ひとりの異なったニーズのコアを解決する、そのお客様に相応しいセールストークだからです。

つまり、お客様によって異なるということです。つまり、そのお客様に相応しいクロージングを、お客様とコミュニケーションと取りながら秘かに探していくことが求められるのです。

私は、お客様一人ひとりのニーズのコアによって、適切なクロージングは異なると書きました。

先に述べた ”ベネフィット” が、お客様のニーズのコアと合っていて、お客様がそれを鮮やかにイメージすることができたのなら、それはクロージングとなる場合があります。一番強力なクロージングですね。

ただ、一般的に汎用性のある ”クロージング” の言葉は、実は少しだけあります。それを学習しておくことは、セールスをしやすくしてくれます。

クロージングの学習のためには、まずニーズのコアについて勉強しておきましょう。

コメント

  1. […] これについての図解と、実践する前の段取りについては、「セールストークの作り方の基本➀段取り」で解説いたしました。  […]