(画像は筆者/トースターと炊飯器の実演販売時に撮影)
売れるセールストークは
お客様の顔の上で書く
(私が実践で得た成果を基に書いています)
新商品の社内プレゼン。担当リーダーがみんなに伝えます。
「今度の新商品はコレです。セールストークはここに書かれています。営業1課の〇〇さんが作ってくれました。とてもよくできていますから、みなさんこれを使って売って下さい」
このあいだも、こういう場面に遭遇しました。
問題ないように思えますが、私から言わせれば、ここには大きな勘違いと思い込みがあります。ひとつは、セールストークが「ここに書かれています」ということ。もうひとつは、「とてもよくできています」ということです。
「ここに書かれていて」「よくできていれば」それで良さそうなものですが、私に言わせれば、”だから思うように売れない”のです。販売コミュニケーション力上達のために、そのワケを、ここに解説いたします。
【人は、理屈より五感に感じて、感情で判断する】
セールストークは書いた人の価値観と感覚によって、その商品の提供価値が表現されています。そして「とてもよくできている」という評価もまた、評価者の価値観と感覚とによって判断されたものとなっています。
なぜ、私がそれらを問題にするのかというと、お客様の価値基準は実に様々だからです。お客様の価値基準が様々なのですから、相対するこっち(営業スタッフ、販売スタッフ)も、様々な物差しを持っていないといけません。
お客様の価値基準とはずれた価値基準でセールスをしても、お客様には上手く伝わらないのです。一生懸命に喋っても・・・。
この頁では、それらの事情を説明して、「お客様の顔の上で書く”売れるセールストーク”」を解説しようと思います。これらの販売コミュニケーションテクニックは、私が実践の場で身に付けたものです。これを身につけると、販売率はひとつレベルアップいたします。
1.人に備わっている五感には、人それぞれにクセがあります。
なので、お客様の五感のクセに寄り添ってトークを進めた方が、お客様の心によく響くのです。クセのタイプは、大きくわけて、以下の三通りです。
(1)視覚感覚を優先する人
(2)聴覚感覚を優先する人
(3)触覚感覚を優先する人(味覚、嗅覚も含む)
私は、実演販売をしながら、お客様の動作や言動を観察して、上記のタイプを推測します。そして、セールストークをお客様が優先する感覚に合わせていきます。
すると、お客様との話がよく合うようになってきます。さらに話もはずみます。なので、お客様の”聞く耳”は”聴く耳”へと変わり、商品情報はお客様によく伝わっていきます。つまり、販売機会が増えるのです。
お客様の動作や言動は、例えば以下のような感じです。
(画像は筆者がトースターと炊飯器の実演販売時のものです)
〔事例:オーブントースター〕
(1)視覚感覚を優先するお客様の場合
・・・お客様はこんな感じです。
・売台の上にある商品サンプルを、〔ジーッと見ます〕〔少し身体を引いて、角度を変えて眺めたりします〕〔身体を乗り出して裏側も見たりします〕
そして口にします。「どこに置こうかしら。うちのキッチンに合うかしら」、「サイズを教えて下さい」、「色はこれだけ?」
つまり、このタイプのお客様は、まずは見た目が大切なのです。
もちろん機能特性、使い方なども気になるし、大切な情報です。でも、最初に気にするのは、見た目です。
なので、セールストークは視覚的要素を多く含んだ内容にして話します。
このタイプのお客様には、お家のキッチンの様子(色、素材、デザイン等)をお伺いして、「それなら、ぴったりですね。よかった、ちょうど合うデザインで」というような内容を、嬉しそうな笑顔でお伝えします。お客様はそれを聞いて安心し欲しくなります。つまり「買ってもいい理由」が増えるのです。
(2)聴覚感覚を優先するお客様の場合
・・・お客様はこんな感じです。
・商品を一瞥して口を開きます。「どこのメーカー?」「日本製?」「何がいいの?」「たくさん売れていますか?」このようなことを、真っ先に尋ねるお客様がいらっしゃいます。
このタイプのお客様は、見た目よりも評判を優先されるのです。
もちろん機能特性、使い方なども気になるし、大切な情報です。でも、最初に気にするのは、評判です。
このタイプのお客様には、例えば「この○○機能は業界初めてです」「TVの□□にも取り上げてくれて、とても評判がいいですよ」というような、評判に関するトークを盛り込みます。
なので、例えば、お客様が***さんという芸能人のファンで、その芸能人も使っています、っていう情報を、もしもお伝えできたら、それだけでクロージングになる可能性は高くなります。
(3)触覚感覚を優先するお客様の場合(味覚、嗅覚も含めて)
・・・・お客様はこんな感じです。
・やたら触りたがります。視覚感覚を優先されるお客様のようにジーッと見たり、聴覚感覚を優先されるお客様のように色々評判を聞いたり、そういうことは後回しです。
扉を開けて、ボディを撫でて、両手で持ち上げて、スイッチを押したり、温度設定のつまみを回したり、そういう動作を真っ先にします。
このタイプのお客様は、自分の手で触れることで商品を知ろうとします。
なので、試食は欠かせないお客様でもあります。トークは、つまみやスイッチ等の操作性の良さ、持ち運びは楽ちん、調理事例の料理名を沢山話題にしてどれも美味しく仕上がることをお伝えします。
「ほら今いい香りが漂ってきました。もうすぐ焼けますよ」など、触覚、味覚、嗅覚などの感覚に適合するトークを中心にします。
以上が、優先する五感にによって分けた時の、タイプです。
さらに、
販売スタッフが知るべき情報があります。次の三通りです。
A:お客様は、この商品を初めて見た。
B:お客様は、この商品のことを知っていた。
C:お客様は、この商品のことを知っていて、買い物候補にしていた。
お客様がA、B、C、どの位置にいらっしゃるのか、それによってトークはおのずから変わっていきますね。もちろん、その内容の程度の差も大切な情報です。
さあ、冒頭の担当リーダーの話。
「今度の新商品はコレです。セールストークはここに書かれています。営業1課の〇〇さんが作ってくれました。とてもよくできていますから、みなさんこれを使って売って下さい」
「とてもよくできています」という評価。実は担当リーダーの優先感覚に合っているという理解を、しておくべきなのです。鵜呑みにしてはいけません。
その時点で、営業担当者は機能特性や使い方の情報は既に棚卸しされていると思います。ですので、それらをセールストークに置き換える場合、ポイントはお客様のタイプによって訴求点を柔軟に変えていくこと、つまりお客様によって〔適切な優先順位を選択して〕〔それにあったセールスをする〕ことです。
例えば、デザインを気にされるお客様に一生懸命に調理の話をしても、そのお客様の耳に情報は素直に入っていかない場合が多いのです。
なので、一生懸命に説明しているのに、思うように売れない、という状況が生まれるのです。
もう、お分かりいただけましたでしょうか。
「売れるセールストークはお客様の顔の上で書く」というのは、お客様が優先される五感に寄り添って、その感覚を優先したセールストークを展開し、それに上記のABCの把握を組み合わせて、その場で作り上げるという販売コミュニケーションテクニックなのです。
この販売コミュニケーションテクニックは、相手先様の五感の優先感覚を常に意識することから身につけます。そのためには、相手先様に気がつかれないように、なにげなく動作や言動を観察することです。それによって、機会の多少によりますが、3カ月もすればおおよそ分かってきます。
そうしたら、成果も少し上がってくるはずです。
販売を楽しみましょう!