低温調理は
鳥むね肉の
「本当の美味さ」を
教えてくれます
低温で調理したお料理、召し上がったこと、ございますか ?
私の仕事は、店頭実演販売であったり、営業の仕事のアドバイスをさせていただいたりしているのですが(時には自分も営業に出ます)、時々〇〇商品の実演をお願いします~と依頼を受けることがあります。
今回は、今話題の低温調理器。
あるイベントで実演をすることになりました。でも、少しばかりの知識があるだけで、実際には低温調理器を使って調理をしたことはありません。
いろいろな資料に書かれている低温調理器のこと・・・
「お肉がやわらかくジューシーになる」「高級レストランのような美味しさ」・・・とはどのような美味しさなのか・・・?
実際に使って、いろいろ実践しないことには、お客様の前で「おいしいですよー」とは言えません。なので実際に使ってみることにしました。
【仕組み】
1.低温調理器のステンレスの部分が、この調理器のヒーターです。ここが隠れる位の深さの鍋を用意します(冒頭の写真)。冒頭の写真の鍋は高さ17センチ。鍋に水を入れます。ステンレスの部分にはMAXとMINの表示があります。お鍋は高さ16cm以上のものを用意しましょう。
水の量は、後で食材を入れた時に食材の容積でMAXを超えないように、食材の量によりますが、MAXから2センチ位下までがいいでしょう。
2.低温調理器には、ヒーターと温度センサーと、先端部分に水を攪拌させる装置が(外からは見えませんが)仕組まれています。これらの作動によって鍋の中のお湯の温度は、設定した温度に、設定した時間、保たれます。
3.食材は真空パックに入れて空気を抜いておきます。真空にできなくても、手で空気を押し出してもかまいません。私はそうしました。(どうなったかは後述いたします)
4.食材と求める調理内容によって「設定温度」と「調理時間」を設定します。黒い上部の平たくなった部分が操作パネルです。(下の写真)
5.温度と時間を設定をして、作動をさせます。この鍋の場合、10分ほどで60℃まで上がりました。設定した温度になるとピピピッと電子音がしますので(この低温調理器の場合)、真空パックに入れた食材を投入します。
6.あとは、そのまま、見張っている必要はありません。ほかのお台所仕事をするか、くつろぐか、TVを見るか、スマホをいじるか・・・時間がくるまでこのまま、そのままにしておいけばいいのです。
なので、調理に時間がかかるように思われるかもしれませんが、計画的におこなえば、調理の間はほっておいていいわけですから、これは実質的な時短といえると思います。
【食材について】
世間に出回っている、いろいろレシピを調べると、紹介されている調理事例には牛肉を使っているのが多いですね。牛肉のその味を美味しくいただくために、低温調理はとても適した調理方法です。ただ、調理する食材は、その他、豚肉でも鳥肉でも、そしてお魚も、お野菜も調理できます。
今回私は、その中で鶏肉の「むね肉」を選びました。
なぜなら「むね肉」は、「もも肉」よりも安い(笑)。そしてカロリーは「モモ肉」よりも少々低い。経済面と健康面を重視するなら「むね肉」なのです。・・・という私の個人的事情を優先しました。ご了承下さいませ。
本当の理由は・・・、
「むね肉」って、どう調理してもパサパサ感があって、ジューシーな美味しさには欠けますよね。
そして、ついドレッシングやソース、マヨネーズなどをガバッとかけてしまって、せっかくカロリー低めだったのに、これでは元も子もない・・・なんて、なってしまうことがあります。
なので、
実は、そのパサパサ感が低温調理で、どうなるのか?
鳥のむね肉が、美味しくてジューシーな仕上がりに、なるのか否か?
それを知りたかったというのもあります。
低温調理の解説を読むと、お肉の低温調理は「瑞々しい」「タンパク質が壊れないから柔らかい・・」と書いてあります。ならば、「むね肉」はどうなるの・・・?
鳥の「むね肉」は、低温調理で、どのように美味しくなるの?
その疑問解決にチャレンジしました。
さらに、後半には、このチャレンジを元に低温調理器のセールストークを書きました。 お役に立てれば幸いです。
【調理開始】
鳥の「むね肉」310gです。皮を取り除きました。
レシピでは「真空パック」と書かれています。私は真空にできる装置を持っていないので、二重チャック付きの保存用ビニール袋に入れて、手で空気を押し出しました。でも空気は少しだけ、どうしても残ってしまいます。その結果は・・・この後に書きますね。
設定温度は60℃、時間は90分にしました。設定温度に達したら、食材を投入。瞬く間に、鳥のむね肉は白っぽくなりました。(下の写真。ほぼ真上から撮影しています)
操作パネルを詳しく解説いたします。
扱いは簡単。左下の二重丸みたなのがメインスイッチ。ここを長押ししてONさせます。液晶パネルが光るので、温度設定→時間設定の順に、上矢印と下矢印を使ってセットをします。その度ごとにSETUPを押して確定させます。セット完了したら、右下の▶を押してスタート。
温度と時間について、
製品付属の取説には、鶏肉:目安温度55℃~60℃、目安時間 1時間~2時間と書かれていました。この幅は、個人の好みということですね。一回一回試して、その出来具合を見て、自分の好みを探すという理解でいいと思います。
ここで、ビニール袋に少しばかり残った空気の問題。
・・・最初は食材が浮いてきます。なので箸で突いたり、お茶碗を重石代わりにしてみたり・・・。でも大丈夫。直に、袋の中に少し残った空気は袋の上部に集まり、お肉の部分は下に沈みます。なので、鍋に入れた状態で、袋のチャックを少し開けて、再度空気を抜き取りました。
このあと、何もしなくていいんです。じーっと見ている必要はないので、他のお料理、作っていました。
ここが、この低温調理器の隠れた提供価値のひとつです。
なぜなら、調理中は他のことをしていていいんですから。
これって、計画的な調理であれば、実は、隠れた時短です。
昨今の調理家電の特徴として「時短」「簡単」がありますが、低温調理器はこれを満たしているわけです。
そして・・・「おいしい」「おしゃれ」は、どうでしょうか・・・。
90分後・・・出来上がりをまな板に乗せて、カット。・・・実に柔らかい!
お皿に盛りつけて完成!
さて、「おしゃれ」かどうかは、この盛り付け方ですね。単身生活の私としては、これが限度。お許し下さいませ。
肝心の味・・・実にやわらかく、鳥のむね肉なのに、とても瑞々しい。おいしーい!
私はポン酢が好きで、ポン酢をかけていただいたのですが、ポン酢が肉に染み入るような柔らかさです。ここでは、パサパサなんか過去の話。
「高級レストランのような美味しさ」という形容が使われていますが、高級レストランに行ったことのない私でも、たぶんそうなんだろうと思うくらいに美味しい!
【ワケ】
肉のタンパク質には二種類あって、熱によってその組織は変わるそうです。これを変性と呼びます。
ひとつのタンパク質は肉の味を美味しくして、
もうひとつのタンパク質は肉を硬くして水分を逃がしてしまいます。その変性温度が、66℃~73℃あたりなんですね。
なので、
66℃を超えない位の低温であれば、肉の柔らかさは保たれるということです。
さらに、鳥のむね肉には、もも肉よりも筋肉の膜が薄くて、加熱することで肉の水分は逃げやすいという性質があります。なので、その性質によって、普通に焼いたり茹でたりした場合には、あのパサパサ感が出てしまうんですね。
でも、
低温調理なら肉の水分は中に保たれたままです。なので柔らかく仕上がるんです。
きっと、「鳥のむね肉」で作るチキンサラダも美味称賛ということになると思います。
【低温調理の注意点】
低温調理には、食中毒を引き起こす菌が繁殖してしまうリスクがあります。なので、レシピの温度と時間をきちんと守り、その他にも十分な注意が必要です。例えば、食材は新鮮なものを使う、まな板、包丁、手や指は清潔に、真空パックは使い捨てにする、食材は設定した温度になってから投入する、調理後はすぐ食べて残さない・・・。レシピをよく守って、衛生環境を整えて調理しましょう。
【結論】
ということで、この低温調理・・・
「いつ頃に食卓に並べたいのか」ということを、きちんと計画立てて取り掛かることさえすれば、
「時短」「簡単」「おいしい」「おしゃれ」の四拍子が揃った、素晴らしく美味しい料理を作ることができます。
(「おしゃれ」だけは、お皿の選び方とか、盛り付けとか、ソースとか、食卓のディスプレイとか個人の裁量によります)」
なによりも、鳥のむね肉が、実はこんなに柔らかくて美味しいお肉だったとは! 感激です!
是非皆様も、食卓に新しい美味しさを、作り出してみて下さい。
* * *
さて、商品の勉強はこれにて終了。次はセールストークです。いつでもお客様の前で喋れるように、低温調理器のセールストークを書きました。営業や販売の仕事をされている方に、何かのお役に立てれば幸いです。
【セールストーク】
この商品のポイントは二つです。
(1)トークの組み立て方は「ニーズの解決」を先にする。
多くの既存商品の場合、そのセールストークの組み立て方は、
①アプローチ ⇒ ②ニーズの喚起 ⇒ ③解決策(商品)の提示 ⇒ ④クロージング という手順が一般的です。
でも、この商品は、「けっこう新しい」「ちまたで噂」「類似品は少なく希少性がある」という性格を持っています。なので、以下の手順にします。
①アプローチ ⇒ ②解決策(商品)の提示 ⇒ ③ニーズの喚起 ⇒ ④クロージング
※ここでのポイント・・・いったい何を解決するのか? ニーズは何なのか?
⇒ その答えは、「より美味しいもの」を求める欲求ですね。
(2)試食ができない時(つまり提供価値をその場で証明できない)・・その対策
限られた条件の中でしか試食はできませんので、多くの場合、最も重要な提供価値である「お肉は柔らかく美味しく、高級レストランみたいに調理できる」を、お客様の目の前で証明することができません。
そのような場合には、視覚に訴求する情報を、努めて工夫を凝らして伝えましょう。
例えば・・・、使った鍋の色は、これ濃い小豆色です。鍋の中はフッ素加工なので濃くて黒に近い灰色です。これは、売りたい商品がステンレスであるので、視覚的に目立つようにしました。もしもステンレス鍋を選んだら、商品の色が背景の色を重なってしまい視覚的な訴求力が弱くなります。
例えば・・・、この商品のキーワードは「おいしい」です。なのに、ステンレス鍋+ステンレスでは寒々しくて、おいしさを感じません。ランチョンマットの橙色も含めて、少しでも美味しさを伝えるために、この色合いを選択しました。
それから、まな板の上のお肉、真空パックに入れたお肉、調理の様子、そして出来上がり・・各々の写真をフリップにして、見せながらトークする。視覚への訴求をきちんとおこないましょう。
さらに、
「お肉が柔らかく調理できる」という提供価値を、視覚で伝えましょう。
その手法は
「普通の調理では硬い・・・過去」と「低温調理では柔らかい・・・未来」という、
「過去」対「未来」という【対比】を、視覚に訴えることです。
たとえば、こんな写真をフリップにして用意。これを見せながらトークします。
「普通に調理すると、鳥のむね肉って、こんな感じで硬くなるじゃあないですか?」(過去)
「でも、お客様。低温で調理すると・・・ こんなふうに、グニャっていうくらいに柔らかく仕上がるんです。お口の中で、もう、とろけるような美味しさですよ」(未来)
トークだけでなく、このような視覚情報を見せることによって、お客様の理解はより深まります。その時のコツは、「過去」と「未来」を見せることです。
こんな感じにトークしてみました・・・
「こんにちは、お客様。お客様は低温調理、もうされていらっしゃいますか?
えっ?まだしたことがない? あー、丁度よかったです!
今ここに、低温調理器があるんです。さあ、お客様、買うとか買わないとか、そういうことは横においておいて、見て下さい、聞いて下さい、触っていってくださいませ!
せっかく、今出あうことができたんですもの、情報だけでも持って帰ってください。情報はタダですからね!」 (クローズドクエスチョン、売る気配は消す)
「今、巷で話題、ネットで話題、時々、テレビや雑誌に紹介されております、あの低温調理。それを、いとも簡単にやってのけてしまう、これが、その低温調理器、○○○!」(権威を活用する。「あの」で強調)
「お肉がですね、もう信じられないくらい、柔らかくてジューシーなんです!
いったいどうやって調理したら、こんなに柔らかくて、ジューシーで、おいしくなるの!?
っていうくらい、飛び切りの美味しさに仕上がるんです!」
(これは提供価値。これ、ニーズを解決した結果、つまり未来を語っています)
「実はですね、お客様・・・。
お肉には2種類のタンパク質があるんです。
ひとつは味を美味しく感じるタンパク質、ひとつは熱によってお肉を硬くしてしまうタンパク質。
その、お肉を硬くしてしまうタンパク質、だいだい66℃以上になると、お肉を硬くしていくらしいですよ。ですからね、そういう温度にならない位の低い温度で調理すると、お肉って柔らかくてシューシーなままなんですって!」
(理屈は、お客様と仲良くなっていないと聞いてくれない。ここに至るまでのコミュニケーションを大事にする。理屈への反応はお客様の価値基準によっても大きく異なるので、お客様の表情などをよく見て、独り善がりにならないことが大事)
「でも、しっかりと熱くしないといけないし、食中毒とかも怖いでしょう。だから、ある一定の時間、その温度に晒すわけ」
「えっ? 時間や温度? はい、たとえば鶏肉では、55度から60度くらいに設定して、1時間から2時間くらい。えっ? そんなに待てない?」
「ですよねー。ああ、食べたい!って思ってから、2時間!も調理にかかってしまうんじゃあ、おなか空いちゃって、なんかつまみ食いしている間に、お腹がふくれちゃったり・・・、しちゃいそうですよね。でもね、お客様、そんなことにならない使い方があるんです」 (共感、ご提案)
「この低温調理器はですね、お客様、計画調理なんです。予め食べたい料理を決めておいて、計画を立てておく。するとね、もう高級レストランみたいな美味しさを、思う存分に味わうことができるんです。しかも、お家でですよ! 嬉しいですよね!」 (ご提案、提供価値、感情を伝える)
「例えばですね、鳥のむね肉。普通に調理すると、パサパサした感じで、なんか味気なくありません? お肉の柔らかさといったら、こんな感じで硬くなってしまうでしょう」
それで、ドレッシングやソースなんかをべったりつけたりして、ああ、身体によくない! それに、ドレッシングやソースなんかを沢山つけたら、お肉そのものの味を、ちっとも味わえないじゃあないですか!ねえ、お客様」(ニーズ喚起)
「でも、もう大丈夫。この低温調理器で調理したら、鳥のむね肉だって、とーっても柔らかくて、ジューシーな美味しさに仕上がるんです! たとえば、こんな感じです」
「鳥のむね肉が、こんなふうに、ぐにゃっとなって、とってもジューシーなんです! 信じられます?」
(低温調理器はニーズ解決する正義の味方。「信じられます?」は反語で強調)
「この低温調理の使いどころはですね、今日はごちそうにしようとか、今度の日曜日はパーティーよとか、何かお祝い事とか、そんな時に、大活躍するんですよ。大切な日には大切な料理が必要でしょう? お客様がいらしたときなんかも、お家のお料理を、自慢できますよ」 (クロージング、ベネフィット、感情に訴求する)
「それに、お客様。高級レストランに行くとしたら、お金、かかるでしょう。
でも、これがあれば、お家が高級レストランみたいになるから、お金はかからない。
たのしいですよ! おいしいですよ!
家族みんなに、
「お母さん、お母さんの料理って、世界一だね! 美味しい!」 なんて言ってもらえたら、嬉しいじゃあないですか。
お客様、これがあれば、それが実現するんです。この低温調理器がひとつ、おうちにあるだけでね」
(クロージング、ベネフィット、感情に訴求する)
*
セールスはコミュニケーションですから、双方による伝達があります。言葉だけでなく、言葉以外の表情や身嗜み、動作や仕草もコミュニケーションであり、双方の関係を左右します。そして、お客様は十人十色、千差万別。
なので、セールストークを用意しても、決してその通りにはいかないのが常です。
だったら、セールストークはいらないのか? いいえ、決してその通りに事が運ばなくてもセールストークはひとつ、作ってみて下さい。なぜなら、それがベースとなって、十人十色、千差万別なお客様に対応がしやすくなるからです。
その時その時、そのお客様の価値基準に寄り添いながら、
そのお客様に相応しいセールストークをその場で組み立てていきましょう。
☆いい商品は、嬉しくて愉しくて、幸せな気分を連れてきてくれますね。Happy!