介護の詩/記憶の欠片/老人ホームでの息遣いと命の灯35/詩境


【車止めで一息】

記憶の欠片

老人ホームで暮らしている、お爺ちゃん、お婆ちゃんのこと、気になりませんか? 

認知症の病状が進んでいっても、ある日突然、”あっ戻った!”と感じさせる一言を発してくれる瞬間に、時には遭遇します。嬉しさを感じて涙が溜まる瞬間でもあります。

私は、介護士として、老人ホームで働いています。

そして、年老いた人がこの世を去っていく、その様子の中に、様々な人生模様を見る機会を頂いております。

介護/老人ホーム

私は、そこで見て感じた様々な人生模様を、より多くの人たちに伝えたいと思いました。

なぜなら、「老人ホームではこんなことが起きているんだ」と知ることによって、介護に対する理解が深まり、さらに人生という時間軸への深慮遠謀を深める手助けになるだろうと思ったからです。

それは、おせっかいなことかもしれません。でも、老後の生き方を考える”ヒント”になるかもしれないのです。

伝える方法は、詩という文芸手段を使いました。

詩の形式は、口語自由詩。タイトルは「車止めで一息」です。これは将来的に詩集に編纂する時のタイトルを想定しています。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

高齢者の、老人ホームでの息遣いと命の灯を、ご一読いただければ、幸いでございます。

【車止めで一息】

〔口語自由詩〕

車止めで一息35

記憶の欠片

記憶の欠片は、

あっち行ってホイ

記憶の欠片は、

こっち行ってポイ

記憶の欠片は、

ホホイのホイのホイ

記憶の欠片は、

ポワーン・・・プアン

記憶の欠片は、

ヒューン・・・サササササ

記憶の欠片は、

フワフワ・・・ユラユラ

そして、

あなた様は、

わたしを忘れてしまった。

あなた様の記憶は、

脳裏から、はがれてはがれて、

はがれまくり、

奈落の底へ落ちていった。

奈落の底の、

漆黒の闇へと落ちていった。

・・・・・

落ちていって、

そして、

消えて無くなった。

・・・でも、

ある日ある時、

脳裏の裏の裏の襞襞の、

どこか秘密の場所に隠れていた記憶の欠片がひとつだけ、

神様の息に舞い上がり、

あなた様の瞳に映った、その瞬間、

・・・・・

あなた様の口から、

キラキラ輝く無上の言葉。

その時、

わたしの目頭には・・・

あふれる涙。

画像はイメージです/出典:photoAC)

あきら

認知症の病状が進んでいかれる方のお世話をさせて頂きながら、”ああ、ご家族様が面倒を見続けるのは大変なんだよね。だから私達のような介護の役割を持った仕事が必要なんだよね”と思う日々です。

先日、私は、馴染みの方に「あなた、誰? ここの人?」と言われて、少しショックを受けました。そんな時には「〇〇さん、認知機能が最近落ちてきています」というスタッフ間での情報共有は必須です。介助の方法を変えていく必要があるからです。

ただ、こんな場面にも、時には出会ったりします。

認知症を患い、認知症がだいぶ進んでしまった方が、ある時、昔に戻ったようにきちんと筋道の通った話を、それは短い文章なのですが、話してくれる瞬間です。

それは ”あっ、戻った!” そう感じさせてくれる嬉しい一瞬です。

病状が進む前の様子を知っているからこそ、嬉しく感じるのだと思います。そして、そのような経験を踏まえていると、認知症の方への介助に、よりいっそうの愛情を傾けて寄り添うことが、しやすくなります。

私が介護士として働いている施設は「住宅型介護付有料老人ホーム」です。

自立の方、要支援1~2の方、要介護1~5の方、各々が住まわれており、ターミナルケア(終末期の医療及び介護)も行っている施設です。

【参考】

介護の詩/車止めで一息/老人ホームでの息遣いと命の灯

読んでくださり、ありがとうございます。