先入観がコロナ陽性判明を遅らせてしまいました/COPDの私の場合


1.先入観というやっかいなもの/先入観は魔物

何かのミスをしてしまった時、人は「先入観が邪魔をしてしまいました」という言い訳をする場合があります。

先入観というのは、時として自分では気が付かない ”魔物のようなもの” なのかもしれません。先入観に邪魔されない、何かいい方法はあるのでしょうか。

私の場合、私がコロナに感染したときに、先入観というものの存在を痛切に感じました。

先入観というものがPCR検査を遅らせて、陽性判明を1日遅らせてしまったのです。その結果、私はコロナ陽性のまま街を歩き、コロナ陽性のまま仕事に就いていたのでした。

私は、8月の終わり頃のある朝、かなりの息苦しさを感じて目を覚ましました。息を沢山吸おうとしても、思うように肺に入ってこないのです。

SPO2(血中酸素の飽和度)を測定すると、その数値は88でした。私は10年程前にCOPD(閉塞性慢性肺疾患)の初期と診断されており、コロナが流行り出した頃早々にパルスオキシメーターを購入して日常的に自分のSPO2を把握していました。

その日の朝、SOP2の88という数値を見て・・・

普段、悪くなっても90以下になることはありません。なので、これはまずいな、COPDが悪化したんだ、もっと真剣にこの病気と向き合わないといけないんだ・・・今度の休みに先生(主治医)の所へ行こう・・・これが、私の思ったこと、そして判断でした。

私は、コロナに感染したとは全く思いませんでした。

でも、その息苦しさ、実は、コロナ陽性による息苦しさであり、コロナ陽性によるCOPDの悪化だったのです。

私は、先入観という魔物に支配されていて、判断を見誤っていたのです。

この記事は、それはどのような先入観だったのか、先入観というものがいかにして判断を間違った方向に向かわせてしまっていたのか、先入観に邪魔されないためには何をどうしておけばよかったのか・・・について考察した、先入観は魔物であるという再発見ノートです。

2.コロナ陽性の通知

8月のある金曜日、私は息苦しさで目を覚ましました。息を吸っても、空気が思うように肺に入っていかないのです。

これはまずい・・と思い、直ぐにCOPD用に処方されて常備しているレルベアを吸引しました。レルベアは頓服のように速攻で効く薬ではありません。でも私の場合、1~2時間もすると呼吸が楽になります。2~3日連続して使うと調子がよくなり、その後2~3週間服用しないまま過ごして、また不調を感じたら服用する・・という使い方を、この数年してきました。

右の水色の部分を上に開けると、そこに吸い口があります。このサイズは縦80㎜×幅65㎜です。左は容器です。この薬は湿気を嫌うので、容器の中には乾燥剤が入っています。

その日私は、このレルベアによって通常の呼吸を取り戻し、そして出勤しました。出勤時の検温は36.2度、私の平熱でした。この状況は過去にもあり経験済でした。今回の場合はSPO2の値がとてもよくなかったということだけです。

そして翌日はというと、前日朝の息苦しさは忘れて、体調には何も問題無し。私は出勤して仕事に就きました。よもやコロナ感染とは、全く頭にありませんでした。仕事は小売り店での店頭接客販売です。

でも、午後になって身体に変化が現れました。

接客中に咳が出るようになり、そして喉が痛くなってきたのです。退勤時に熱を測ると36.7度ありました。そして、帰宅後に再度体温を測ると36.8度ありました。私の平常時の体温は36.0~36.2位なので、微熱ですね。

私は介護の仕事もしていて、7月に介護ホームで起きたクラスターを間近に見ておりました。そして、コロナ陽性になった同僚たちの共通する症状であるコロナ感染の特徴「熱、咳、喉の痛み」という情報を身近に得ていました。なので、自分の症状「微熱、咳、喉の痛み」から、その時初めて、コロナを感染を疑いました。

ところが翌日の朝、熱は平熱に戻り、咳は少しだけ、喉の痛みは和らいでいたのです。もしかしたら、ただの風邪だったのかな・・、仕事に行こうかな・・とも思いました。

でも、万一ということがあります。私は60才以上という高齢であり、COPDという持病を持っていることから、万一コロナに感染して重症化したら深刻になる可能性が高いです。それに、周囲に迷惑をかけてはいけません。

なので私は、朝一番でPCR検査を受けに行ってみました。”検査を受けに行ってみた” のです。念のため・・・という思いでした。

そしてその日の夜、陽性の連絡をショートメールで受け取ったのです。以下が、検査結果です。陽性と書かれていました。

その後、医師の診察を受けて、息苦しかった朝にはコロナに感染していたという判断をいただきました。

3.先入観の温床

息苦しさで目覚めた時、すぐにコロナに感染したのかもしれない・・と思わなかった、つまりコロナ感染を疑うことを阻害していた先入観は、以下の4つです。

(1)介護現場でも働く私は、7月にクラスターを間近に経験しました。介護スタッフ22名中8名がコロナに感染したのです。・・クラスターの中にあって感染しなかった私は、自分は感染しにくい体質なのかもしれない、そんなふうに思うようになっていました。私は、実にあさはかだったのです。

(2)私は、コロナ陽性が判明する7日前に4回目のコロナ感染予防接種を受けていました。4回も接種したのだから大丈夫だろう・・という思いが私を支配していました。

(3)コロナ陽性が判明する直前の1週間、コロナに感染するようなリスクのある行動や、コロナ感染リスクのある環境に身を置くなど、一切ありませんでした。感染のリスク場面には遭遇していないのだから、よもやコロナに感染することは無いはずだ、と思っていました。

※感染後に振り返ってみると、唯一こんなことがあったことを私は思い出しました。息苦しかった朝の前の日、私は電車に乗り座っていました。そうしたら私の前に若いカップルが立ちました。そしてけっこう大きな声で、時には笑いながら楽しそうに話しをしていました。もちろんマスクはしています。ただ、時々、男性にはマスクを掛け直す行為がありました。・・感染を思い当たるとしたら、これだけです。

(4)COPDになってから約10年の間、過去に息苦しくなる日は、ほんのたまにですが、ありました。なので、今回のように息苦しさを感じて起きた朝においても、上記の(1)(2)(3)という先入観が重なり、コロナとは思わずに、COPDの悪化なのだと思ってしまいました。

4.パルスオキシメーターという安心

私はパルスオキシメーターを常備しています。私はこれを日常的に使っていました。COPDを抱える私の場合、次の画像のようにSPO2が91という低くなることは、たまにありました。

その時は、息苦しいという自覚症状があり、先に書きましたリルベアを吸引します。すると、1~2時間で回復します。通常、SPO2の数値は94以下だと要注意とされていて、私の場合ですが確かに94以下だと息苦しい感じがします。ちなみに、私が働いている介護現場では、SOP2の値が94以下だと入浴は見送るという対応をとっています。

回復すれば時は、以下のような数値となり、呼吸は支障のない状態に戻っています。

SOP2の数値が低かったとき、どうしてコロナを疑わなかったのか・・・?

それは、パルスオキシメーターを使っている日常に、先に書いた(1)(2)(3)の理由が加わり、自分はコロナにはならないという無意識ですが慢心があったのだと、後になって思いました。

「灯台下暗し(とうだいもとぐらし)」という諺があります。全くその通りだったのかもしれません。パルスオキシメーターが灯台で、それを使っていることに安心をしてしまい、かえって本当のことに気が付かなかったという意味です。

5.先入観回避の対策

「先入観が、そうさせてしまいました、どうもすみませんでした」・・言い訳によくある文句です。これは常に結果論ですね。先入観を意識するのは、多くの場合良くない結果になった時の反省の中にあります。

なので、先入観を回避することは、できるものではありません。回避できない観念だからこそ「先入観」と呼んでいるのですから。

だからこそ、やっかいであり、結果が深刻であればあるほどに、魔物のように感じるのです。

でも、もしも先入観を回避できるとしたら・・・いろいろ考えた結果、今回の私の場合は反省も含めて以下のことが想定できました。

【予習をしておくことが大切】

「息苦しさを感じたら、持病のCOPDだけではなく、コロナも疑え」・・という予習があらかじめしてあれば、もっと慎重になって、息苦しかった当日にPCR検査を受けていたかもしれません。

「息苦しさを感じたら、持病のCOPDだけではなく、コロナを疑え。すぐにPCR検査をしろ」という予習は思うだけでなく、忘れないように、紙に書いて部屋の壁に貼っておいてもよかったのかもしれません。

対策の行為自体は、実はこのように、とても簡単なことなのです。ただ、それを実行させることは、なかなか難しいことなのかもしれません。

なぜなら、安全安心を求めるのは人の常であり、事実の証明に至らなくても心理的に安全安心が得られる何らかの要因があ場合、それが確かなものでなくても実害がなければ、ホッと一安心してしまうからです。

つまり・・・

最初に、誰にでも「感染したくないという思い」があります。そして「感染しないであろう理由」(私の例では先に述べた三つの理由)を見つければ、見つけるそのたびに、「自分は感染しないかもしれない」「この症状は感染ではない」という安心が大きくなっていったからです。・・・実は、これが慢心だったのです。

今回、初めてコロナに感染して、怖かったのはニュースからその情報を得ていた「体調の急変」でした。なので、陽性判明が1日遅れたことは対応が1日遅れることであり、当初とても怖い思いでした。でも、幸いにも急変は起きずに回復して日常生活に戻ることができました。

【先入観について、wikipediaより】

因みに、先入観をwikipediaで調べてみると、冒頭部分には次のように解説してあります。

先入観(せんにゅうかん)は、対象認識において、誤った認識や妥当性に欠ける評価判断などの原因となる知識、または把握の枠組みを言う。そこから脱するには、すべての不確実なものに一度は疑いをもつべきであるとデカルトは述べている。(出典:先入観/wikipediaより)

「そこから脱するには、すべての不確実なものに一度は疑いをもつべきものである」・・コロナに感染したか否かは不確実なことなのだから、私は疑いを持つべきであったのですね。

さらに、このwikipediaの冒頭部分の最後には、このような解説が書かれています。

ネガティブな認識や対象に対する評価がもたらされるようなものを特に「先入観」という。(出典:先入観/wikipediaより)

評価は常に結果に対しておこなわれるものですから、事前に「先入観」を認識することは、なかなか難しいことなのですね。

先入観って、ほんと、やっかいなものなんだな・・・何か重大な局面に出会ったときには、万一のことを頭に入れて、あらゆる場面を想定して紙に書いて予習しておく・・・これが大切だと、強く印象に残った2週間でした。