【車止めで一息 048】
笑顔の観音様

老人ホームで暮らしている、お爺ちゃん、お婆ちゃんのこと、気になりませんか?

いつも笑顔で「ありがとうございます」と仰ってくれた貴女様。私は、貴女様を観音様なのだと感じていました。
私は、介護士として、老人ホームで働いています。
そして、年老いた人がこの世を去っていく、その様子の中に、様々な人生模様を見る機会を頂いております。
介護/老人ホーム
私は、そこで見て感じた様々な人生模様を、より多くの人たちに伝えたいと思いました。
なぜなら、「老人ホームではこんなことが起きているんだ」と知ることによって、介護に対する理解が深まり、さらに人生という時間軸への深慮遠謀を深める手助けになるだろうと思ったからです。
それは、おせっかいなことかもしれません。でも、”老後の生き方を考えるヒント” になるかもしれないのです。
伝える方法は、詩という文芸手段を使いました。
詩の形式は、口語自由詩。タイトルは「車止めで一息」です。

(画像はイメージです/出典:photoAC)
高齢者の、老人ホームでの息遣いと命の灯を、ご一読いただければ、幸いでございます。
【笑顔の観音様】
〔口語自由詩〕
車止めで一息 048
笑顔の観音様
閉じようとしているのか、
開けようとしているのか、
わからないけれども・・その目その顔は、
まるで観音様のようだった。
貴女様は半目のまま穏やかな笑みを浮かべて、
半分開いた瞼の中の瞳は涙で濡れていた。
本当に観音様だった。
間違いなく観音様だった。
感謝しかない。
貴女様はいつも笑顔だった。
貴女様はほんの少しの介助にも笑顔で、
ありがとうございますと、いつも応えてくれた。
その笑顔がまわりを和やかにして、
皆を助けてくれた。
なんて気持ちがいいんだろう。
笑顔の大事さ、
笑顔の有難さを、
笑顔がもたらす幸せを、
教えてくださった貴女様。
魔法のような笑顔で、
皆を幸せへと導いてくださった貴女様。
だから、
貴女様は観音様。
喘鳴が聞こえてきました。
もうすぐ天国ですね。
天国でまたお会いさせて下さいませ。
笑顔の貴女様。
*
※喘鳴(ぜんめい)/死前喘鳴のこと。死期が迫った時の特徴的な呼吸音です。その後、下顎呼吸〔喘ぐような呼吸〕に移行して死に至ります。発生の頻度には個人差があります。

画像はイメージです/出典:photoAC)
詩境

観音さまというのは、正式には「観世音菩薩」と言います。
私のイメージは「困ったときに助けてくれる仏様」なのですが、作家の瀬戸内寂聴さんは、その著書「寂聴仏教塾」の中で観音様について記述していますので、それをご紹介いたします。

以下、引用
”観世さまは人間が困っているときに助けてくださる仏なのですが、その活躍たるは、まるでスーパーマンのようです。”
(引用元:「寂聴仏教塾」瀬戸内寂聴/集英社文庫/ 2009年10月25日第1刷/177頁より)
上記の著作には、以下のことが綴られています(以下は私の要約)
”瀬戸内寂聴さんは、歌人であり作家「岡本かの子(画家:岡本太郎の母)」さんの伝記物語を書いたときに(昭和40年、瀬戸内寂聴さん43才)、岡本かの子さんが観音様を信仰していることを知りました。そこから信仰の世界に触れるようになり、それがきかっけとなり、昭和48年に出家しました。”
瀬戸内寂聴さんを出家させてしまうくらい、心に震えを与えた観音様。ものすごいパワーがあるように、私は思いました。
それ以来、私は、何か困ったときに助けになってくれる人は皆、観音様だと思っているのです。・・・私が何に困っているかっていうと、介護現場でのいろいろな「困った事柄」です。
それらの「困った事柄」を抱えながら介護現場で働いているときに、笑顔で「ありがとうございます」と仰って下さる貴女様は、私を勇気づけてくれる観音様だったのです。
私が介護士として働いている施設は「住宅型介護付有料老人ホーム」です。
自立の方、要支援1~2の方、要介護1~5の方、各々が住まわれており、看取りも行っている施設です。
【作品一覧】

ご一読いただけましたら、幸いでございます。
読んでくださり、ありがとうございます。