介護の詩|介護がなければ|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

※この頁では「介護が無い状態」を想像することによって「介護とは何か?」を考えてみました。要介護人口が増え続けている超高齢化社会。分かっているつもりの「介護とは何か?」について、私達は再確認しておく必要があると思います。

【車止めで一息 97】

介護がなければ

(画僧はイメージです/出典:photoAC)

老人ホームで暮らす、お婆ちゃんお爺ちゃんのこと、

気になりませんか? 

少しだけでも気にしてみて下さい。

そこには、人生最期の自分の姿があるかもしれません。

日本の人口に占める高齢者比率が年々高くなっていることは、皆さんご存じのことと思います。

2024年、70歳以上の人口比率は23.4%に達しました。

2045年には、70歳以上の人口比率は29%を超えることが予想されています。

そして、介護を必要とする高齢者もまた増え続けています。

〔統計数値の出典:総務省統計トピックスNo.142

なのに、この先、介護士も社会保障費も不足していくことが明らかになっているのです。

近い将来、社会保障の仕組みだけでなく、介護そのものへの取り組み方についても、大きな修正を余儀なくされるかもしれません。

ならば、分かっているつもりの「介護とは何か?」について、私たちは再確認しておく必要があるのではないかと考えました。

そこで「介護とは何か?」を再確認するにあたり、

一般的な定義に囚われることなく、もっと単純に「もしも介護が無かったらどうなるのか?」という視点で「介護とは何か?」を考えてみようと思いました。

まずはその前に、一般的な介護の定義を確認しておきましょう。

<介護:一般的な定義>以下引用/

/引用終わり。

〔出典:介護福祉士実務者研修テキスト/第2巻|発行:中央法規出版、2023年第2版〕

これを読むと、「加齢に伴う」わけですから「私の身体機能は低下する」「私の日常生活行為には介助が必要だ」・・という自分の未来図を想像することができます。

つまり、介護は「いつか介護される私」の問題でもあるのです。

今回の詩作品は、上記の定義は定義として確認しておいて、定義に囚われることなく「もしも介護が無かったらどうなるのか?」を想像したところから書き始めました。

すると、そこから導かれる「介護とは何か?」は、一般的な定義よりもっと簡潔でもっと分かりやすい言葉で言い表すことができました。

介護の必要性を再確認して、少しでも多くの方が介護に関心を注ぎ、自分の問題として超高齢化社会の課題を考えるきっかけになってくだされば幸いでございます。

介護がなければ 】

車止めで一息 97

介護がなければ

介護に、

もしも移動介助がなかったら、

わたしはトイレへ行くことができず、

洗面所にも窓際にさへも行けなくて、

ベッドに腰かけたまま途方に暮れてしまうだろう。

介護に、

もしも排泄介助がなかったら、

わたしはトイレで転倒したり、

ベッドの上で失禁したりを繰り返し、

クソまみれの毎日に茫然自失してしまうだろう。

介護に、

もしも更衣介助がなかったら、

わたしはズボンを頭から被ろうとしたり、

片足に両脚をいれたまま転倒したり、

パンツのまま床に転がり苦悶し続けるだろう。

介護に、

もしも食事介助がなかったら、

わたしは手と口の周りをべちょべちょに汚し、

残飯をまき散らしたように胸とお腹と太腿を汚し、

半分も食べれず半分も飲めずやせ細ってしまうだろう。

介護は生の営みを助けてくれている。

介護は生の面目を保ってくれている。

介護は生の品位を維持しながら、

介護は生の尊厳を守ってくれている。

介護は今日も尊厳を抱きしめながら、

世の中皆の衰えていく心身と格闘している。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

【 詩 境 】

詩 境

自分に介護が必要になったとき、もしも介護してくれる人がいなかったら・・。

そう考えたときに初めて、定義ではない「介護とは何か?」が分かるのではないかと思いました。

介護と介助は、使い分けをしました。

「介護」は自立支援を目的とした行為行動の全般を意味し、「介助」は介護におけるひとつ一つの具体的な生活支援を意味しています。「介護>介助」です。

いずれにしても、そこには”尊厳を大事にする”という姿勢が最も大切です。

人には守られるべき尊厳があり、誰もがお互いに尊厳を大事にすることによって、世の中はよくなっていくのだと思います。

介護の仕事は、きついとか汚いとか危険とか言われるのですが〔いわゆる3K〕、私は介護の現場で働いていて、介護士自身は3Kをあまり意識していないように感じています。おそらく、介護の現場には、”尊厳を守る”といういう役割を強く認識せざるおえない状況があるからでしょう。尊厳を守るためには、3Kがどうのこうのと云うような所でウロウロしているわけにはいかないのです。

ところで、介護は尊厳を守る仕事ですが、尊厳を損なう行為として頭に浮かぶのは、いろいろなハラスメントや差別などの排他的行動もそうですし、戦争はその最たるものだと思います。

尊厳を守ることは、介護だけでなく、社会をよくするために一番大事なことですね。

その一番大事なことが、実はもっとも身近なところにあるのです。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

今までの作品一覧

以下にございます。

介護の詩/老人ホームで暮らす高齢者の様子/「車止めで一息」/詩境

 

 

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