介護の詩/車止め/老人ホームでの息遣いと命の灯34/詩境


【車止めで一息】

車止め

老人ホームで暮らしている、お爺ちゃん、お婆ちゃんのこと、気になりませんか? 

両腕をハンドルに伸ばし前傾姿勢になって歩行器を使う、その恰好はまるでライダーです。でも同時に、長い人生の時間軸の中にいることも想像させてくれるのです。

私は、介護士として、老人ホームで働いています。

そして、年老いた人がこの世を去っていく、その様子の中に、様々な人生模様を見る機会を頂いております。

介護/老人ホーム

私は、そこで見て感じた様々な人生模様を、より多くの人たちに伝えたいと思いました。

なぜなら、「老人ホームではこんなことが起きているんだ」と知ることによって、介護に対する理解が深まり、さらに人生という時間軸への深慮遠謀を深める手助けになるだろうと思ったからです。

それは、おせっかいなことかもしれません。でも、老後の生き方を考える”ヒント”になるかもしれないのです。

伝える方法は、詩という文芸手段を使いました。

詩の形式は、口語自由詩。タイトルは「車止めで一息」です。これは将来的に詩集に編纂する時のタイトルを想定しています。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

高齢者の、老人ホームでの息遣いと命の灯を、ご一読いただければ、幸いでございます。

【車止めで一息】

〔口語自由詩〕

車止めで一息34

車止め

ゆるり ゆるゆる ゆるゆるり・・・

歩行器は、

つっかえ、つっかえ・・・

そろり そろそろ そろそろり・・・

右をにぎって、左をにぎって、

伸ばした両腕左右のハンドル。

垂れた頭の前傾姿勢。

ゆっくり上げる顔に二つの瞳。

そのまま、

もしも影絵にしたら、

その姿はまるで、

颯爽としたライダーのよう。

ヘルメットをかぶり、

シートにまたがって、

スピードを上げ風を切り疾走していく爆音四百CC

それは、

あなた様が若かった頃のこと・・・

おつかれさまでした。

もう疾走しなくていいんですよ。

爆走も、快走も、力走も、

ここでは、しなくていいんです。

ここは車止め。

ここで、ゆっくり休んでいってください。

ゆるり ゆるゆる ゆるゆるり・・・

歩行器は、

つっかえ、つっかえ・・・

そろり そろそろ そろそろり・・・

ぼちぼち ぼちぼち ぼーちぼち・・・

画像はイメージです/出典:photoAC)

あきら

歩行器を使うときの姿勢やその恰好は、ひとそれぞれです。その方のADLに合った姿勢や格好があるようです。

そして目に付くのが、両腕を伸ばしてハンドルを握り、顔だけをヒョイと持ち上げた前傾姿勢です。それはまるで、バイクに乗っているみたいなのです。

そして、その様子は、その方の若かりし頃を思い出させてくれました。

ただ、光景はバイクに乗っているみたい・・なのに、実際の歩行は「ゆるり ゆるゆる ゆるゆるり…..つっかえ、つっかえ…..そろそろり」なのです。

介護の仕事は、その方の長い人生の時間軸を俯瞰しながら取り組んでいくことが、大事だし、必要です。それがないと、介護の仕事は辛いだけになってしまいます。

私が介護士として働いている施設は「住宅型介護付有料老人ホーム」です。

自立の方、要支援1~2の方、要介護1~5の方、各々が住まわれており、ターミナルケア(終末期の医療及び介護)も行っている施設です。

【参考】

介護の詩/車止めで一息/老人ホームでの息遣いと命の灯

読んでくださり、ありがとうございます。