介護の詩/順送りですから/老人ホームでの息遣いと命の灯49/詩境


【車止めで一息】

順送りですから

老人ホームで暮らしている、お爺ちゃん、お婆ちゃんのこと、気になりませんか? 

あの人は了見の狭い人だなと感じることがあれば、自分でも後になって ”あの時は了見が狭かったな” と思い直すことがあったりします。老人ホームでもそれは同じことです。

私は、介護士として、老人ホームで働いています。

そして、年老いた人がこの世を去っていく、その様子の中に、様々な人生模様を見る機会を頂いております。

介護/老人ホーム

私は、そこで見て感じた様々な人生模様を、より多くの人たちに伝えたいと思いました。

なぜなら、「老人ホームではこんなことが起きているんだ」と知ることによって、介護に対する理解が深まり、さらに人生という時間軸への深慮遠謀を深める手助けになるだろうと思ったからです。

それは、おせっかいなことかもしれません。でも、”老後の生き方を考えるヒント” になるかもしれないのです。

伝える方法は、詩という文芸手段を使いました。

詩の形式は、口語自由詩。タイトルは「車止めで一息」です。これは将来的に詩集に編纂する時のタイトルを想定しています。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

高齢者の、老人ホームでの息遣いと命の灯を、ご一読いただければ、幸いでございます。

【車止めで一息】

〔口語自由詩〕

車止めで一息49

順送りですから

なにがいいかって、

笑顔でいるときが一番いい。

なごやかで、

おだやかで、

あたたかい。

・・・・・

なにがよくないかって、

怒っているときが一番よくない。

とげとげしくて、

辛そうで

顔は冷たい。

・・・・・

なぜ笑顔でいられるのかって?

曇っている空であっても、

その上にはいつも青い空があるんだって、

想像できるから。

・・・・・

なぜ怒ってしまうのかって?

曇っている空を嘆くばかりで、

その上にはいつも青い空があるんだっていうことを、

想像できないから。

・・・・・

そして今日、朝食時、

席のことで怒りだした貴女様。

新しい入居者に向かって貴女様は言った。

「その席は、私がいつも座っているところよ! どいて!」

狭い世界がますます狭くなってしまいましたね。

・・・・・

貴女様が座るその前に、

その席によく座っていた方は、

今は天国。

貴女様も、

もうすぐ天国。

譲り合ってまいりましょう。

画像はイメージです/出典:photoAC)

あきら

私が働いている老人ホームでは、ダイニングでの食席は決めていません。好きな席に座っていろいろな方との交流を持ってほしいからです。また、毎年必ず何人かの方が他界し、住まわれる高齢者様は変わっていくことにもよります。

それでも、毎日同じダイニングで食事をとれば、座るテーブルと席はほぼ固定していくのが常です。すると、そこで暮らすご入居者様は、その席に既得権のような意識を持つようになります。

この作品は、ある方が食席に既得権を主張された場面を描きました。私としては譲ればいいのにと思った次第です。

私が介護士として働いている施設は「住宅型介護付有料老人ホーム」です。

自立の方、要支援1~2の方、要介護1~5の方、各々が住まわれており、ターミナルケア(終末期の医療及び介護)も行っている施設です。

【参考】

介護の詩/車止めで一息/老人ホームでの息遣いと命の灯

読んでくださり、ありがとうございます。