介護の詩一覧

介護の詩|死前喘鳴/大涅槃図|老人ホームでの理想的な最期|詩境

ご夫婦で住まわれていて奥様が先にご逝去されました。看取り介護の最後の日の出来事です。それは死前喘鳴から始まりました。この作品では、視座をご本人様とスタッフである私と、ブロック毎交互に置きました。ご本人様の部分は事実を元にした私の想像、他はノンフィクションです。ご本人様を取り囲むご様子は、まるで大涅槃図のようでした。

介護の詩|自立喪失/車止め|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

自立の方が転倒をきっかけに自立を喪失していく場合があります。転倒→入院→ADLの低下→車椅子。中には認知機能低下の事例もあります。家族はショックです。そんな時、老人ホームは役に立ちます。老人ホームは自宅介護では困難なことにも対応してくれる終の棲家だからです。車止め、どん詰まりですが一息入れられる場所でもあります。

介護の詩|現金なお爺ちゃん/入浴|老人ホームで暮らす高齢者|詩境

入浴介助を、一度は拒否されても、スタッフを代えることにより拒否はなくなる場合があります。ご入居者様も人の子。その時々の異なる気分や好き嫌い、コミュニケーションの相性があるからです。この作品は入浴介助のスタッフが女性に交代したら、とたんに元気になったお爺ちゃんの話です。

介護の詩|中空の意志/爪切|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

ほとんとの時間をベッドに横になり眠っているように見えている方でも、脳は覚醒している場合が多々あります。つまり、眠っているように見えていても、”声をかける” ”手を握る” ”身体をさする” など、その方の聴覚と触覚に訴え続けることは、とても大事なことなのです。この作品は、爪の手入れの最中に私が体験した感慨です。

介護の詩|炎のランナー|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

陸上選手だった貴方様。ベッドからゆっくり立ち上がった貴方様はよれよれの二つ折れ。けれども、顔を上げて前を向いたその瞬間、その姿がチェストの上の写真の若かりし頃の貴方様と重なりました。熱いエネルギーの塊をそのまま感じさせてくれた貴方様。歩行器を押す姿も、炎のランナーのようでした。

介護の詩|終の棲家の最初の頃|老人ホームの高齢者の息遣い|詩境

老人ホームへの入居理由は様々ですが、本人様よりも家族の意志が強いまま入居された場合は問題が生じます。本人様は混乱し帰宅願望に目覚めるからです。そのような事例も含めて、老人ホームへの入居直後の様子を数例、詩というよりも散文にて構成してみました。

介護の詩|順送りですから|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

私が働く老人ホームのダイニングでの食席。決めなくてもほぼ固定していきます。でも1年経つと人は入れ替わっています。他界される方と新入居者様がいらっしゃるからです。「行く河の流れは絶えずして(中略)世の中にある人とすみかと、またかくのごとし(方丈記)」が短いサイクルでおこなわれます。その時に遭遇した感慨を詩にしました。

介護の詩|笑顔の観音様|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

いつも笑顔で「ありがとうございます」と仰っていた貴女様。その笑顔と「ありがとうございます」は周囲をなごやかにして下さいました。そして、私が抱えている「困った事」にも勇気を与えてくださいました。私が働いている老人ホームでの出来事です。私はその方を、心の中で、実は「観音様」と呼んでいました。

介護の詩|かくれんぼ|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

私は、認知症の方に寄り添うとき、その方が今、人間の基本的な欲求の何を欲求しているのだろう・・と考えます。その欲求とは、マズローの五段階欲求説で述べられている欲求のことです。この作品は、その取り組みをしながら認知症の方に寄り添わせて頂いたときの話を素材にしています。ほんの一瞬ですが、記憶の欠片が落ちてきました。

介護の詩|遠い人/認知症|老人ホームで暮らす高齢者の様子|詩境

認知症の方に寄り添う工夫。ひとつはその方の過去暦を頭に入れておき話題にすること、ひとつは意識して五感に訴えること、ひとつはその方の反応にはペーシングをして共感すること、・・と私は、現場で学びました。この方の過去暦には、麻雀の二文字がありました。わたしは麻雀を視覚と聴覚に訴えてみました。その時の話です。