介護の詩/介護の仕事で大変なこと/老人ホームでの息遣いと命の灯64/詩境


【車止めで一息】

介護の仕事で大変なこと

老人ホームで暮らしている、お婆ちゃん、お爺ちゃんのこと、気になりませんか?

私は今、介護士として老人ホームで働いています。

施設は「住宅型介護付き有料老人ホーム」です。

自立の方、要支援1~2の方、要介護1~5の方が住まわれており、ターミナルケア(終末期の医療及び介護)も行っている施設です。

介護/老人ホーム

私はそこで働きながら、人が老いて、そして他界していく様子のその中に、様々な「発見と再発見」を得る機会をいただいております。

そして私は、それらの「発見と再発見」を、より多くの人たちに伝えたいと思いました。

なぜなら、

「ああ、老人ホームではこんなことが起きているんだ・・」と知ることによって、介護に対する理解が深まり、さらに人生という時間軸への深慮遠謀が深まると思ったからです。

そしてさらに、

これはおせっかいなことかもしれませんが、

介護をする方にとっても介護をされる方にとっても、

老後の生き方を考えるヒント….

それは人生の締めくくり方を考えるヒント…..

になるかもしれないと考えるに至ったからです。

伝える方法は、詩という文芸手段を使いました。

詩の形式は、口語自由詩。タイトルは「車止めで一息」です。これは将来的に詩集に編纂する時のタイトルを想定しています。

(画像はイメージです/筆者の友人撮影:京急川崎 大師線))

高齢者の、老人ホームでの息遣いと命の灯を、ご一読いただければ、幸いでございます。

※今回は、老人ホームで働く介護職スタッフの取り組み姿勢について言及しています。

口語自由詩

車止めで一息 64

介護の仕事で大変なこと

介護の仕事をしているんですって?

大変ですね・・・おむつも変えるんでしょう?

赤ん坊のとは違うんでしょうね。

そりゃ、ちがいますよ。

大人のですからね。

でもね、大変ではありません。

わたしもあなたも、

みんな同じように、ウンチもオシッコもするんですから、

なにも大変なことなんかないんです。

大変なのはですね、

陰部の世話をしながら、

その人の心に、

どうやって寄り添うのかっていうことなんです。

介護の仕事をしているんですって?

大変ですね・・・体力がいるでしょう?

腰を悪くしませんか?

腰? それは、大丈夫ですよ。

きちんとした姿勢でやっていますからね。

体力? 特に意識はしていませんよ。

だって、考えてみてください。

介助するのは日常生活のできない部分ですからね。

体力よりも必要なのは気力なんです。

その人の心と身体になって、

その人の生活行動を支えるんですから。

その人の心と身体になって、

その人の精神生活も支えるんですから。

大変なのは、

体力じゃあなくて、

その人に寄り添い続ける、

気力なんです。

そして、

その人に寄り添い続ける、

気力を持つには、

生を尊ぶ、

愛が必要なんです。

(画像はイメージです/筆者の友人撮影:京急川崎 大師線))

あきら

介護の仕事を知らない人からは、みんな同じような質問を頂きます。

「大変でしょう」「体力いるよね」

この作品の冒頭は、実際に言われた言葉です(相手は、私がWワーク〔小売業〕していた先の女性の上司。その方は自身の育児を思い起こして、介護の仕事を乳児のおむつ交換と比較されました)

実際に現場で働く私にとって、本当のことは知ってもらいたいです。その気持ちがこの作品のモチベーションです。

介護と介助

作品中、この二つの言葉を使い分けしています。意味は以下のとおりです。

<介護>

加齢、疾病、障害などにより日常生活に助けが必要な人に、その日常生活が困らないように生活支援をすること。

介護を必要とされる人が自立した日常生活を送れるまで、介護は継続します。

<介助>

介護における個々の具体的な支援のこと。

起床介助、排泄介助、移乗介助、食事介助など、個々の行為をさします。

なので、個々の介助が完結すれば、そこでその介助の目的は達成されます。

つまり、介助は介護の中の部分ですね。

なぜ「愛情」でなくて「愛」なのか?

私は「(介護の仕事には)生を尊ぶ愛が必要なんです」と書きました。

私はここで「愛」を「大切に思うことの最上級」という意味で使いました。

介護の仕事に大切なものは「愛」です。

もちろん「愛情」があれば尚いいのですが、大切なのは「愛」です。

なぜ、介護の仕事に大切なものが「愛情」でなく「愛」なのか?

それは仕事だからです。

もしも仕事ではなく家族の介護だとしたら、その時は「愛情」も「愛」も両方大切です。大切というより、それが自然な心の発露だと思います。

愛情には感情が伴いますが、愛は感情のように起伏はありません。

愛はその対象が広いですが、愛情の対象は個人的であり具体的です。

「〇〇に愛情を注ぐ」という表現をしても「〇〇に愛を注ぐ」とはあまり聞きません。

介護の仕事は全てのご利用者様に同じサービスを提供しないといけません。

なので、大切なものは「愛情」ではなく「愛」なのです。

大切な….”もの” と表現しましたが、もちろん「愛」は観念であり、ものではないことは言うまでもありません。

まとめると、

家族の介護に大切なのは…

というより自然な心の発露である「愛情」そして「愛」:「愛情」>「愛」

仕事の介護に大切なのは…

どのご利用者様にも同じサービスを提供するための「愛」

愛情が伴う場合でも「愛」>「愛情」

私は介護の仕事の中で、「愛」と「愛情」をそんなふうに考えています。

【参考】

介護の詩/車止めで一息/老人ホームでの息遣いと命の灯

読んでくださり、ありがとうございます。