百人一首の世界/恋の歌/人生の歌/季節の歌/日本の名月/桜を詠んだ歌


** プロローグ **

この記事の内容

この頁では、小倉百人一首【二つの特徴】を反映している歌を取り上げ、それらを解説した記事を一覧にしています。

現代語訳については意訳〔Free translation〕を取り入れました。百人一首に関する解説書等は数多くあり、インターネットでも簡単に手に入れmおることができるのですが、それらは全て直訳されているからです。私が今ここで直訳することは、私にとっても読み手にとっても面白くありません。

詩歌鑑賞の奥行は、その言外にある作者が感じているであろう感慨も含まれます。表現された言葉による作品は作者の感慨が凝縮されたものですが、言葉にできなかった感慨も多々あるはずです。そこを探ることもまた、詩歌鑑賞の楽しみだと、私は思っています。

意訳〔Free translation〕はそのことを可能にしてくれる、詩歌鑑賞の精神作業です。もちろんきちんとした直訳があってのこと。直訳⇒意訳・・そこにこそ詩歌鑑賞の醍醐味があります。

各々、タイトルをクリックして頂き、該当する記事を読んで頂ければ幸いです。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

【小倉百人一首/二つの特徴】

1.恋歌が多い。

通説では四十三首が恋歌とされています。その中で、歌の技巧に走ることなく、恋する気持ちが一生懸命に表れている歌を取り上げて解説しました。

2.同じ言葉の使用が多い。

例えば、「秋」という語は十二首に、「月」という語は十一首に、「恋」という葉は十首に、「逢」という語は九首に、各々詠み込まれています。

多く使われている単語や語句、言葉には、当時の人たちの興味が集まりやすかったのかもしれません。(当時とは、飛鳥時代鎌倉時代の初期)

だとするならば、その言葉にどのような意味を与え、歌にすることで何を伝えたかったのでしょうか。そのわけを、明らかにしてみようと思いました。

【意訳〔Free translation〕】

歌の解釈には、意訳〔Free translation〕を試みました。理由は以下のとおりです。

①直訳は、世間に沢山存在していて手に入れやすいけれども、意訳した解説は少ないからです。

②意訳は、詩歌鑑賞の味わいと楽しみを広げてくれる醍醐味だと、私は思っているからです。

「意訳」とは「原文の一語一語にとらわないこと。そして、作者の歌を詠んだ意図をよく理解して、全体の要旨が伝わるように訳すこと」です。

ここに「直訳と意訳」を考察した文章がありますので、参考にご紹介しておきます。〔翻訳についての断章/直訳と意訳/山崎洋一〕

*

さあ、それでは、

百人一首が繰り広げる和歌の世界を味わってみましょう。

(画像はイメージです/出典:photoAC)

3. 恋の歌

百人一首の恋歌の中から、心情をエネルギッシュに吐露している歌などを選び、さらに恋心の内容を分類して解説しました。重複して解説している場合もありますこと、ご承知おきくださいませ。

ここには、

恋する心が、ギューッといっぱい詰まっています。

たとえば・・・

諦めると言いながら、憎む気持ちが見え隠れ・・。

逢わなければ、こんな苦労はしなかったのに・・。

恋は終わったのに、諦めの悪いわたし・・。

死ぬ前にもう一度逢いたい恋心・・。

さらに、次のような歌も詠まれているんですよ。

恋心にはパワーを感じます。

死んで恋を成就させたい・・。

恋は厭世観を吹き飛ばす・・。

逢えばさらに熱くなる恋心・・。

恋するほどに苦悩は深く・・。

分かってほしい、待ち続ける辛さを・・。

(1)百人一首/恋は苦悩と裏腹/恨み、後悔、孤独、失意の歌/恋歌四首

(2)百人一首/恋と命/生きたい、死にたい、もう一度逢いたい/恋歌三首

(3)百人一首/恋に生きる/逢えば、熱くなる恋心・乱れる恋心/恋歌二首

(4)百人一首/待たされる恋/待ち焦がれたまま夜は明ける/恋歌三首

(5)百人一首/「逢ふ」を題材にした九首に読み取れる関心事

(6)百人一首/「恋の歌」/ 漢字「命」を詠み込んだ恋歌四首から恋を知る

(7)百人一首/恋の歌/「恋し」を詠み込んだ恋歌八首から、恋心を知る

(8)百人一首/辛い恋/恋に落ちる/恨み/失恋・悲恋/情熱/涙の人生歌/失恋歌

※直訳、英訳、英訳のGoogle翻訳、意訳を載せて、より分かりやすくしました。

(9)百人一首/恋の歌/英訳・英語で味わう日本の恋/平安貴族の恋愛事情八首

(画像はイメージです/出典:photoAC)

4. 人生の歌

「人生の歌」では、人生を長い時間軸で捉え、心は過去と現在と未来を行き来しています。そして、世の中をいろいろな角度から眺めて、その悲哀を五七五七七の中に表現しています。

「人生は長い旅。今は昔、振り返れば懐かしい・・あの頃のこと」・・・というような作者の感慨を言葉にも言外にも共感できれば、これらの鑑賞はどんどん楽しくなっていくと思います。

百人一首/人生は長い旅/振り返れば恋しい今は昔/五七五七七で詠う二首

百人一首/「世」を用いて、世間、憂き世、人生などを詠んだ、短歌十首

(画像はイメージです/出典:photoAC)

5. 季節の歌

「季節の歌」は、四季折々の美しい景色や情景などを想像させてくれる歌です。そこに感じられる作者の情感も併せて詠み取ると、鑑賞に奥行きが出てきます。

これらの歌を一気に詠むと、日本の艶やかな景色が目に浮かんできます。視覚的イメージの持ち方が大事なように思います。

・百人一首/春/花と春/春を題材にして詠っている五七五七七、和歌十首

・百人一首/「夏」を詠んだ五七五七七、和歌三首

・百人一首/「秋」を詠んだ五七五七七、和歌十二首

・百人一首/「冬」を詠んだ五七五七七、和歌四首

・百人一首/「花」を題材にした五七五七七、和歌六首

・百人一首/「有明の月」を詠んだ五七五七七/「有明の月」とは/和歌三首

(画像はイメージです/photoAC)

6. 日本の名月

「日本の名月」では、日本の様々な月を味わうことができます。月を詠った歌を十一首も集めたのですから、当時の日本人の心には月にかける並々ならぬ想いがあったようですね。

これら十一首は「月」という語を用いて詠んでいる歌です。

「有明の~」始まる始まる第三十番歌の「有明」には月がイメージされますが、「月」という語を使っておらず「月」は主役ではないので十一首の中は入れておりません。

第三十番歌「有明のつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし」

(00)日本の名月:まとめ/百人一首から、月を詠んだ11首を味わえます

上の(00)は、

月を詠んだ十一首をまとめてひとつの記事にしたもの。

下の(1)~(11)までの記事は、

十一首、個々の歌を丁寧に解説した記事です。

(1)日本の名月/天の原~三笠の山にいでし月かも/百人一首7番歌

(2)日本の名月/今来むと~有明の月を待ち出でつるかな/百人一首21番歌

(3)日本の名月/月見れば 千々にものこそ悲しけれ/百人一首23番歌

(4)日本の名月/朝ぼらけ~有明の月と見るまでに/百人一首31番歌

(5)日本の名月/夏の夜は~雲のいづこに月宿るらむ/百人一首36番歌

(6)日本の名月/めぐり逢いて~雲がくれにし夜半の月かな/百人一首57番歌

(7)日本の名月/やすらはで~かたぶくまでの月を見しかな/百人一首59番歌

(8)日本の名月/心にも~恋しかるべき夜半の月かな/百人一首68番歌

(9)日本の名月/秋風に~もれ出づる月の影のさやけさ/百人一首79番歌

(10)日本の名月/ほととぎす~ただ有明の月ぞ残れる/百人一首81番歌

(11)日本の名月/嘆けとて 月やはものを思はする~/百人一首86番歌

(12)百人一首/月/英訳・英語で味わう日本の名月/日本の月を詠んだ11首

(画像はイメージです/photoAC)

7.最初の五文字が、同じ/似ている歌

暗記をしょうとする時、役に立ちます。

ここをマスターすると、42首の歌をカバーできるからです。

百人一首上の句の最初の五文字が同じ暗記に役立つ紛らわしい歌の一覧

百人一首上の句の最初の五文字が似ている暗記に役立つ紛らわしい歌の一覧

読んでくださいまして、ありがとうございます。

(画像はイメージです/photoAC)

8.英訳

百人一首は日本語の古語で書かれています。

もしも、百人一首を他の言語、例えば英語で表現したら、鑑賞しやすくなるのではないだろうか?

少なくとも、鑑賞に幅が出て、より深く作者の感慨に共感を寄せることができるのではないだろうか?・・・そのような思いから、他の言語に訳したものを探していましたら、以下の資料を見つけました。

著作権:Copyright (C) SIG English Lounge All Rights Reserved.

サイト:小倉百人一首英訳

百人一首の英訳の出典については、全て上記の資料からでございます。

百人一首には、たとえば「思ふ」という動詞(又は名詞「思ひ」)を詠んでいる歌が20首あります。

「思ふ」なのだから英訳したら I think ~ なのだろうと、私の英語の知識力では思っていました。でも、それはごくわずかでした。

必ずしも「思う」の英訳に I think ~は使っていないんですね。

つまり、

「思ふ」というひとつの言葉を取り上げても、「思ふ状況に合わせた、実に様々な英訳」がなされているのです。

1.百人一首/英訳①/逢い見ての後の心にくらぶれば第四十三番歌

〔恋歌/第43番歌〕逢瀬を遂げてますます高まる恋心….気持ちの高ぶりを詠った歌。

2.百人一首/英訳②/君がため惜しからざりし命さへ第五十番歌

〔恋歌/第50番歌〕逢えばどんどん好きになる….逢う為には何でも言う情熱の歌です。

3.百人一首/英訳③/忘らるる身をば思はず誓いして第三十八番歌

〔恋歌/第38番歌〕自分を振った男への恨み節….怖い恋の歌です。

4.百人一首/英訳④/もろともにあはれと思へ山ざくら第六十六番歌

〔人生歌/第66番歌〕自分を分かってくれる誰かを求めて….山奥を彷徨います。

5.百人一首/英訳⑤/あらざらむこの世のほかの思ひ出に第五十六番歌

〔恋歌/第56番歌〕死ぬ前にもう一度逢って、あの世での思い出にしたい・・。

6.百人一首/英訳⑥/ながからむ心も知らず黒髪の~第八十番歌

〔恋歌/第80番歌〕英訳なら erotic が相応しい、官能的で艶めかしい恋の歌です。

7.百人一首/英訳⑦/思ひわびさても命はあるものを~第八十二番歌

〔人生歌/第82番歌〕恋歌に数えられています。でも私は、人生歌だと言いたい。何故なら、成就しない積年の悲恋が、長い人生そのものだからです。

8.百人一首/英訳⑧/心にもあらで憂き世にながらえば第六十八番歌

〔人生歌/第68番歌〕辛いこの世の中、生きたいとは思わないけれども…で始まるこの歌は、人生の悲哀を詠っています。

9.百人一首/英訳⑨/ながらへばまたこのごろやしのばれむ第八十四番歌

〔人生歌/第84番歌〕生きるのが辛くても、勇気をもらえる処方箋のような人生歌です。要点は「ながらへば~」という仮定で始まることです。

10. 百人一首/月/英訳・英語で味わう日本の名月/日本の月を詠んだ11首

「月」を詠んだ歌、「月」が含まれている歌を、英訳と意訳を中心に解説しました。

(画像はイメージです/photoAC)

9.桜を詠んだ歌

桜と云えば春・・現代においては、開花情報に一喜一憂したり、満開の桜の木の下で写真を撮ったり、酒や料理に舌鼓したり、人々は春に咲く桜の花に多大なエネルギーを向けています。

でも、百人一首に載せられている桜を詠う歌に、そのようなプラスのエネルギーはほとんど見当たりません。むしろ散り行く桜に無常観さえ漂わせているのです。

・ 9番歌:桜の花が色褪せていく様子は、容姿が衰えていく自分のようだ。ああ無常。

・33番歌:一見してのどかな時でも桜は散り、時は常に過ぎていく。ああ無常。

・61番歌:桜は主役のように見えるだけ。実は権力を称えている、おべっか・ごますりの歌。

・66番歌:桜の花は脇役、主眼は作者自身の境遇のあはれさ。

・73番歌:ただ桜が咲いている情景を詠んだ歌。

・96番歌:桜の花弁は舞い散り、は年老いて古くなっていく。ああ無常。

以下を参照くださいませ。

百人一首/桜を詠んだ歌/開花を楽しむよりも散る桜に共感する無常観

(画像は現在の京都御所の建礼門/出典:photoAC)

京都御所:明治維新までの天皇のお住まい

歌会が沢山開かれただろうなぁ…と思いをはせます。

読んでくださいまして、ありがとうございます。